元デベロッパーのコンサルタント皆藤一郎です。融資特約という言葉を不動産取引をしたことのある人なら聞いたことがあると思います。ローン特約などと言う場合もあります。不動産売買において購入申込をする際に、買付申込書、買付証明書、購入申込書どの名前の書面で売主へ購入意思表示を行いますが、購入希望金額の他に付帯条件として、手付金額、引渡し期日、引渡し状態などと合わせ、「融資を利用して購入するが融資がうまくいなかかった場合は白紙解約」という約束事が融資特約です。これを契約書に書く前提での申込行為です。

 住宅ローンを使って住まいを購入する場合などは大抵つきます。ただこれにしても金融機関の事前審査を通しておかないとその買付申込は受け付けないという場合もあります。

 売主の立場からすれば、折角高い金額の買付申込書をもらっても融資が手当てできずに売買契約が白紙になってしまっては困るので「融資特約なし」の買付申込書を提出してくれる購入検討者と優先して交渉したいのが本音です。

 そのような事情もあるため、売買の仲介を行う不動産会社で買主側についている会社(客付業者)は競合がある場合は「融資特約なしの買付申込書」を買主に出してもらえればありがたいのですが、最近融資特約なしの買付申込書を提出した相手と売買契約の話を進めていたのに融資が手当てできずにキャンセルになったという話を聞くことがあります。

 理由として一つには、優先交渉権を得たいがために融資の手当ての見込みが立っていないにも関わらず「融資特約なし」で買付申込書を提出してしまい結局融資の話をまとめられず頓挫してしまうケースがあります。これはマナー違反です。

 もう一つには、金融機関の支店、担当者と融資の話を進めていて事前審査で内諾レベルにまであったので「融資特約なし」の買付申込書を提出したのですが、本部審査で最終的に融資承認が得られなかったというケースが考えられます。

 後者の理由として金融庁・日銀が不動産向け融資、特にアパートローンに関して相続税対策や低金利を背景とした過剰融資に目を光らせ始めたことがあるのではないかと言われています。

<参考>金融庁・日銀、アパートローンの監視強化 過剰供給リスクで(ロイター)
http://jp.reuters.com/article/fsa-loan-idJPKBN14016D

 今までだったら通っていた融資の審査がだんだん通り難くなっているという感触が不動産取引の現場で実務をしていても感じられることが増えつつある気がします。

 オリンピックまでは不動産市況・建設市況は登り調子と言う人もいましたが、思ったより早く潮目を迎えたようにも思われます。

 不動産取引に関わる売主、買主、その仲介会社は今後一層「その買付申込書は大丈夫か?」を吟味できる資質が問われそうです。

 
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