都内で高さ10メートル超の中高層建築物を建てる場合は、東京都中高層建築物の建築に係る紛争の予防と調整に関する条例が適用されます(特別区、市も同様の条例を定めています)。
同条例第6条第1項では紛争防止の1手段である建築説明会について、「近隣関係住民からの申出があったときは、建築に係る計画の内容について、説明会等の方法により、近隣関係住民に説明しなければならない。」(第6条第1項)と規定しています。
つまり説明会の実施は必須義務ではなく、住民の申し出があった場合のみ開催すればよいことになっています。このため大半の物件では説明会を開きませんが、東京都は「建築紛争の予防という面からは、建築主は近隣関係住民からの申出がなくても積極的に説明することが望ましいと考えられます。」と述べており、一般的に周辺環境への影響が大きい超高層ビルの場合は説明会が実施されています。
建築説明会を行う際の説明事項として、東京都中高層建築物の建築に係る紛争の予防と調整に関する条例施行規則第9条第2項では以下の項目を掲げています。
1. 中高層建築物の敷地の形態及び規模、敷地内における中高層建築物の位置並びに付近の建築物の位置の概要
2.中高層建築物の規模、構造及び用途
3.中高層建築物の工期、工法及び作業方法等
4.中高層建築物の工事による危害の防止策
5.中高層建築物の建築に伴つて生ずる周辺の生活環境に及ぼす著しい影響及びその対策
主に所在地・面積・高さ・構造など建築物に関する事項、工期・工法・危険防止など工事に関する事項、日照時間・風力・交通量の変化など環境面に与える影響について説明が行われます。
建築主は近隣住民の反対運動が起きないように、東京都の建築確認が下りる直前になってから消極的に(ひっそりと)建築説明会を開くことが多いようです。
ただし、建築確認が下りた後でも住民が計画変更や差し止めを求めることは可能です。東京都も、「建築確認は、建築計画が建築基準法等の取締まり法規に違反していないことを明らかにするに過ぎず、その計画が近隣住民の生活環境に及ぼす影響が民法の不法行為に該当しないことまで意味するものではありません。」と述べています。同条例第9条でも紛争が発生することを想定して知事によるあっせんを規定しています。
売却予定物件の近隣に超高層ビルなどの建築計画が持ち上がった際には可能な限り説明会へ参加して自らの住戸への影響を確認するとともに、最悪の場合は訴訟にまで持ち込む可能性を念頭に置くことが大切です。