住宅の全部または一部を活用して宿泊サービスを提供する民泊については、2016年6月に公表された観光庁の「民泊サービス」のあり方に関する検討会最終報告書(案)に基づき法令整備が進められています。
それにともない民泊サービスの活性化が進むとの声も多く聞かれます。しかし分譲マンションの場合は管理組合の同意がなければ、入居者(区分所有者)が民泊事業を始めることはできないと考えられます。
一般的に住宅用マンションは住戸の事務所利用を禁止しています。これは不特定多数の人の出入りに伴い清掃などの費用負担増、騒音・ゴミ処理などのトラブル発生、治安の悪化などが生じることを予防するための措置です。
民泊を解禁すれば同様の不安が生じます。とくに日本語での意思疎通が困難な外国人の利用が多く見込まれる場合は、その懸念が大きくなります。
このため大多数の分譲マンションは民泊サービスの提供を認めないと考えられます。ただし、もともと住戸の事務所利用を認めている雑居ビル型マンションや資産運用目的のオーナーが多い都心のコンパクトマンションの場合は、管理規約を改定して民泊を積極的に認める可能性があります。
こうした物件のオーナーは住居としての快適性や安全性よりも稼働率を重視しているため、民泊解禁により利用者が増えれば資産価値が増加するかもしれません(そこに住むことが快適かどうかは分かりませんが)。
また一部の都心の高級物件では、国際貢献とかボランティアといった観点から民泊を認める可能性があります。こうした物件の宿泊者に対しては一定のスクリーニングがかかると想定されるため、資産価値の低下につながる恐れは低いと考えられます。
最も民泊リスクが大きいのは郊外のファミリー向け物件です。こうした物件を好む旅行者は所得水準が低かったり、犯罪目的の来訪者だったりする可能性が高いと想定されます。そうしたリスクを顧みずに民泊を解禁すれば一気にスラム化する懸念があります。
民泊の解禁がマンションの資産価値向上につながるか否かは、物件特性により異なります。居住環境の悪化を防ぎつつ稼働率を高めることができるのであれば、民泊を推進することも一案です。