中古不動産を売却するときには内覧が行われます。その際、買手のニーズに即した情報を的確に提供して好印象を与えるためには、以下の点を検討し戦略を練り上げることが重要です。
1.アピールポイントの明確化
売却物件に興味を持つと想定される人の特徴を把握することが大切です。例えば都心の恵まれた立地の古い物件や富裕層向けタワーマンションの場合、一般的に買手は大幅なリノベーションを前提に購入可否を判断します。このため住戸の内装や設備にはあまり興味がありません。耐震性能、騒音対策、周辺環境など独力では改善できない点を強調する方が効果的です。一方で築浅(とくに戸建て)物件の購入者は新築物件と比較して検討します。傷みが少なければリノベーションコストが下がるため、住戸の手入れが行き届いていることは大きなアピールポイントになります。
2.清潔感の演出
買手がリノベーションを前提としていても不潔な物件を購入したいとは思いません。モデルルーム並みのピカピカの部屋に仕上げる必要はありませんが、汚い住戸では確実に買手の印象が悪くなります。あまり手入れが行き届いていなければ、思わぬところに瑕疵(かし)が隠れているのではないかとの不安を招きかねません。
3.売却理由の整理
物件の長所をアピールすればするほど「なぜ売却するのか」という疑問を抱かれます。いい物件を売りたがる裏には何かあるはずと思われます。都心から自然豊かな郊外に移りたい、子供が独立したので夫婦で都心の利便性の高いマンションに住みたいなど、物件の品質と関係のない明確な売却理由を考えておく必要があります。
4.正確な情報提供
買手側から聞かれないことを言う必要はありませんが、いずれ質問される可能性が高いことについては積極的に情報提供することが重要です。不利な情報を隠したがるという印象を抱かれると取引が成立しにくくなります。周辺の再開発計画、日照時間、騒音、近隣住民など誰もが気にすることは正直に申告することが大切です。
5.不動産会社の選択
売却物件や内覧者の特徴を理解して的確なアドバイスを行える不動産会社(担当者)を選ぶことも重要です。一般的な留意事項しか言えない不動産会社は避けるべきです。最初の面談時に売却戦略に対するアドバイスを求め、不動産会社の取引成立に対する意欲と能力を見分けましょう。
何事でも同じですが良い成果を得るためには的確な現状分析と戦略立案が不可欠です。不動産の売却金額はサラリーマンの年収の数倍に相当します。それだけの金額の取引を行う訳ですから、内覧についても仕事と同じぐらい真剣に戦略を練るべきです。