あらかじめ買手が決まっている場合を除けば不動産売却時には仲介会社を選任する必要があります。ここでは売手に適した仲介会社の選任ポイントを解説します。
1.業歴が長いこと
不動産会社は都道府県知事または国土交通大臣(2以上の都道府県で営業する場合)から免許を受けなければ売買、仲介(媒介)などの業務を行えません。免許番号には更新回数が示されているため、それから業歴の長短を把握できます。例えば住友不動産株式会社の免許番号は「国土交通大臣(15)第38号」ですが、カッコ内の数字により15回更新されていることが分かります。一般的に業歴の長さは企業の信用力に比例するので、免許更新回数が多い不動産会社は相応に信頼できます。
2.特徴が明確なこと
売却物件に適した特徴や強みを有する不動産会社を選ぶことも重要です。不動産会社には得意な地域、物件タイプ、顧客層などがあります。例えば都心5区の物件情報が豊富、高級マンションの取扱件数が多い、外国人富裕層に強いといったアピールポイントを確認しましょう。
3.買取保証をしないこと
一定期間に売買契約が成立しなかった場合の買取保証を行う不動産会社も要注意です。通常、買取保証額は査定額より20~30%程度低くなります。このため実際には買手候補者がいるにも拘わらず、敢えて顧客へ紹介せずに自社が買い取って転売することを考えている場合もあります。買取保証の積極的な利用は「多少安くても早く物件を処分したい」と言っていることと同じです。不動産会社に足元を見られるので注意しましょう。
4.両手取引をしないこと
不動産売買の仲介手数料は国土交通省の告示により、売買代金400万円超の場合はその3.24%以内にすることが決められています。これは売手、買手の一方に対するものであり、両者から仲介依頼を受けていれば2倍の手数料を得られます(これを両手取引と呼びます)。つまり不動産会社は売買代金を多少下げてでも両手取引を行う方が儲かるため、高値で売却したい売手よりも安値で購入したい買手の味方になるケースが多いのです。このため売手と買手の担当部門の分離など利益相反行為の防止策を実施している不動産会社の方が相対的に信頼できます。
5.広告宣伝費が少ないこと
不動産会社がDM、新聞広告、テレビCMなどの広告宣伝費を使えば、当然それらを回収しなければなりません。その原資は顧客が支払う仲介手数料などです。ある大手不動産会社の場合、複数の営業所から都心のタワーマンション・オーナーへ頻繁にDMを送っています。こうした社内のテリトリー調整もなく明らかに他社より広告量が多いとみられる会社は、両手取引をする傾向が強いと考えられます。
不動産売却を成功させるコツは情報収集や判断を人任せにしないことです。不動産会社は自社の論理で利潤最大化を目指していますが、それは必ずしも売手の利益と合致しないことを肝に銘じましょう。