毎週金曜日配信、「人生の上がり3ホール、賢いシニアのお金の話」
お金・資産運用のプロ 中村伸一さんが「ヤングシニア」向けの資産運用や、老後資金に関してのノウハウを、ゴルフ要素を交えながら伝授します。

今回は、公的年金と税金のお話です。(リビンマガジンBiz編集部)

第0打:コースマネージメント 公的年金にかかる税金

15番はほぼストレートなミドルホール。ティーショットは、打ち上げですが、フェアウェイが広いので、Aさんは思い切って振っていこうと考えました。

ヤングシニア世代の方々は、年金受給世代でもあります。公的年金の場合、年金機構が源泉徴収を行い、税金徴収後の金額が振り込まれます。そのためあまり税金のことを意識していない方が多いのではないでしょうか。
公的年金には老齢、障害、遺族の3つの給付があります。その中でも老齢給付は雑所得として課税対象です。障害年金、遺族年金は非課税ということを覚えておきましょう。
■年金の解説記事はこちら
年金いくらもらえるか、わかってますか?(5番ホール130ヤード Par3)


(画像=Pixabay)

第1打:社会保険料控除で税金が少なくなる

Aさんは、キャディバッグからドライバーを抜き、フェアウェイセンターを狙い、フルスイングしました。打感が最高で、ドライバーの芯を捕らえた球は、フェアウェイセンターを捕らえ、飛距離は240ヤードでました。

ヤングシニア世代で収入がある方々は、個人が支払う社会保険料(国民年金保険料、厚生年金保険料など)は社会保険料控除の対象です。つまり税金が安くなります。給与所得者は年末調整で、給与所得者以外の人は確定申告すると、所得税が軽減されます。

厚生年金保険料については給与から控除されているので、源泉徴収票に控除された社会保険料の総額が記載されています。例えば、年末調整する人は個人で申告する必要はありません。

給与所得者で家族の国民年金保険料を支払っている場合は、年末調整の際に、社会保険料控除の申告に加えることができます。日本年金機構から家族宛に送付された控除証明書を添付して会社へ提出することで所得税が安くなります。例として、お子さんが学生で、国民年金を払っている場合などです。これは結構忘れる方が多いので、チェックしておきましょう。

自営業の方は確定申告をすることで社会保険料控除ができます。家族の分を支払っている人は給与所得者同様です。社会保険料控除の対象となるのは、その年の1月1日から12月31日までに実際に支払った保険料です。

第2打:公的年金等は雑所得

ピンまで残り140ヤードほど。Aさんはフォローの風を計算し、8番アイアンで打ちました。しかし風に乗りすぎ、ピンまで8メートルのところにオンしました。

公的年金の老齢給付、確定給付企業年金(BC)、確定拠出年金(DC)などは、年金全額が課税対象にはなりません。総収入から公的年金等控除額を差し引いて、公的年金にかかる雑所得を求めます。

公的年金等の収入総額-公的年金等控除額=公的年金に係る雑所得

つまり、公的年金の収入全額に税金がかかるのではなく、控除できる金額を引いたのちの金額に税率をかけ、税額を計算します。

公的年金等控除額は年金収入の合計額によりますが、65歳未満は70万円65歳以上は120万円の控除額があります。それに基礎控除38万円が加わりますから、65歳未満の方は108万円65歳以上の方は158万円が最低控除金額です。65歳未満であるかどうかは、その年の12月31日の年齢によって決まるということに注意が必要です。
また、所得税のほかに、住民税がかかることも忘れてはなりません。

第3打:公的年金の源泉徴収と確定申告

8メートルのフックライン、逆目とよんだAさんは、強めに打ちましたが、1.5メートルオーバーしてしまいました。

年金の支払者である日本年金機構は、年金支給の際に所得税を源泉徴収しています。一定要件に該当する場合には、住民税の特別徴収も行っています。第2打で述べた通り、控除額を超える金額については所得税がかかりませんので、源泉徴収もされません。
また「公的年金等受給者の受給者の扶養控除申告書」を日本年金機構に提出すると、源泉徴収の際に公的年金等控除、配偶者控除、扶養控除などの適用を受けられます。この書類は毎年8月ぐらいに機構から送付されます。

源泉徴収では、社会保険料控除、生命保険料控除などは考慮されていませんので、確定申告で過不足を清算します。

公的年金から源泉徴収されている税額がゼロであり、他に収入がない場合は、確定申告を行う必要はありません。年金以外に給与などの所得がある場合は、原則として確定申告を行います。

あとは、老齢厚生年金以外に企業年金を受け取っている場合です。企業年金からは所得税が源泉徴収されていますので、確定申告することにより、税額が還付される可能性があります。

源泉徴収は所得税の仮払い、確定申告は所得税の清算」と考えると理解しやすいでしょう。確定申告は1年間の所得税を正しく計算し確定させる手続きですので、年金と給与などの2種類以上の所得がある場合は、原則として申告をすることになります。


(画像=Pixabay)


第4打:確定申告不要制度


公的年金等の雑収入が400万円以下で、かつ公的年金以外の所得の合計が20万円以下の場合は、所得税については確定申告不要を選択することができます。

老齢基礎年金や老齢厚生年金で400万円を超えることはありませんので、他に企業年金等を受け取らず、給与などもなければ、確定申告不要を選択できます。しかし、公的年金等に係る雑所得以外の所得金額が20万円を超える場合には、確定申告を行う必要があります。

所得税の確定申告が不要な場合であっても、住民税の申告が必要な場合もあります。また、確定申告不要制度を選択すると、申告の手間ははぶけますが、源泉徴収には反映されていない各種控除があるとき、払い過ぎた所得税の還付を受けることはできないので、注意が必要です。

一般的には、社会保険料や生命保険料を支払っている場合は、確定申告をする方が還付を受けられます。

残り1.5メートルの下りのスライスライン、Aさんは流し込み、パーで上がりました。

 
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