毎週金曜日配信、「人生の上がり3ホール、賢いシニアのお金の話」
お金・資産運用のプロ 中村伸一さんが「ヤングシニア」向けの資産運用や、老後資金に関してのノウハウを、ゴルフ要素を交えながら伝授します。
今回は、老後を楽しむためにヤングシニアが知っておきたい、がん治療とがん保険の話です(リビンマガジンBiz編集部)。
(画像=Pixabay)
第0打:コースマネージメント 今の時代のがんの実態は
ここまで、人生のマネーラウンドを1番、2番ホールとパーで進めてきたAさん、3番ホールはパー5のロングコースです。このコースは左ドッグレッグで、バンカーに注意をしなければならないコースです。自身の判断だけではなく、きちんとキャディさんとの相談をしなくてはいけません。
さて、ヤングシニアの関心事の一つに、健康があります。健康をそこねると、老後の趣味や生きがいなど、好きなことができなくなってしまいます。ゴルフなんてもってのほかです。
厚生労働省が発表した平成28年(2016年)人口動態統計(推計値)によると、死亡原因のトップ3は、1位悪性新生物(がん)37万4千人、2位心疾患19万3千人、3位肺炎 11万4千人の順でした。1位のがんは死亡総数の約3割を占めます。
このように、がんはまだまだ人間にとって油断できない病気です。これに対して生命保険各社はがん保険を用意して、万が一の治療費をサポートしています。
第1打:がん保険の内容を見ていこう
キャディさんは、Aさんにコースの特徴を教えます。Aさんは最近買い替えたドライバーを取り出し、フルスイングしました。
がん保険の基本的な内容から見ていきましょう。
その基本構成は、がんを発症したときにまとまった金額を受け取ることが出来る「診断一時金(診断給付金)」と、「がん入院給付金」「がん手術給付金」を組みあわせ、さらに各種の特約がセットされる仕組みです。
医療保険の特約でがんの治療費に備える方法もありますが、がん保険を使うと、各種がんに特化した補償内容が備わっています。がん保険も定期型と終身型がありますが、近年では終身型の商品が主流です。
Aさんが放ったドライバーショットは、きれいなドローボールとなり、フェアウェイ左の240ヤード地点に落ちました。狙った通りのショットにニンマリしています。
第2打:苦痛を遠ざける治療にシフトしつつあるがん手術
第2打、ピンまで300ヤード以上残っています。
刻む作戦でしたが、1打目の余韻が忘れられないAさんは、3番ウッドで構えると大きくコースを横断する大ショットを狙いました。
がん治療の代表的治療が「手術」だということは、今も変わりません。根治性向上を目的に、部位ごとの手術範囲や、技術改善、最適化が研究されてきました。それに加え、最近では「苦しくない医療」を目指し、さらに治療後の生活の質を確保できる治療法を模索しています。手術方法も、がんに侵された部位をなるべく温存しようとする、「機能温存手術」へと移行してきています。「内視鏡手術」「腹腔鏡下手術」「胸腔鏡下手術」などの「鏡視下手術」も盛んで、そのほかにはロボットが支援する手術も行われています。
また、抗がん剤や放射線をうまく組み合わせた治療も行われています。例えば、かなりステージの進んだがんに対し、まず化学療法で腫瘍を小さくしてから手術を行う。といったものが増えています。
Aさんはボールの頭を打ってしまい、トップ。
飛距離も130ヤードしか飛びませんでした。
第3打:放射線治療の現状
嫌な流れを立ち切ろうと、気を取り直し、第3打残り160ヤードを5番アイアンで構えに入りました。興奮気味なAさんは、もうキャディさんに耳を傾けません。
放射線治療も進歩を続けており、最近ではがん患者の25%が放射線治療を受ける時代になっています。治療装置の性能が上がり、「高精度放射線治療」「粒子線治療」「定位放射線治療」などが積極的に導入されているようです。
今までの放射線治療では、がん患部以外の付近の正常な組織まで傷をつけることがあり、治療後の生活に大きな影響が出ることも多々ありました。このような副作用を最小限にするため、患部にピンポイントに照射できる技術が開発されました。
ボールは左にそれ、ガードバンカーへ。再びへこむAさん。
(画像=Pixabay)
第4打:抗がん剤の現状
化学療法では、抗がん剤を使うことが主な治療手段です。最近では、細胞障害性抗がん剤の他に、「分子標的薬」というものが出てきました。
従来主流であった細胞傷害性抗がん剤は、がん細胞以外の健康な細胞にも毒性があり、この強い副作用がつきものでした。分子標的薬とは、がん細胞の持つ特異性に標的を合わせ、効率よく成分が作用するように作られた薬です。
抗がん剤は、外来投与が主流となっており、これを使う約半数の方が入院することなく、外来治療で終了しています。
ガードバンカーからサンドウェッジで打った球は、ピンから大きく外れ、残り10メートルのところに4オン。3たびがっくりのAさん。
第5打:第四の治療法、免疫療法
このように医学の進歩は目覚ましいものがあります。その一方で、先進医療を使うと驚くほど高額の医療費が発生する問題があります。分子標的薬は、従来型の抗がん剤と比較すると、約8倍から9倍ほどになります。化学療法だと、治療期間が長期間になり、その分だけ経済的な負担が伴います。これらの治療は保険適用外となることが多いので、がん保険の活躍する場面が増してくることは間違いないでしょう。
10メートルのパットを残したAさん。ここで頭が冷えたのか、改めてキャディさんに芝目を相談します。キャディさんはスライスラインを読み切りましたが、わずかに外し、このホールボギーとしてしまいました。
各生命保険会社から出されている商品内容は、各社ごとに異なります。普通の方ではなかなか理解しづらいところがあるので、そこは専門家に聞きながら賢い商品選択することがお勧めです。また、すでに保険に加入されている方々も、見直しをすることで、適応範囲が広がったり、場合によっては保険料が安くなることもあります。健康に気を遣うヤングシニアの世代の方々こそ、時間を作って加入している保険を見直してみましょう。