こんにちは、弁護士の岩﨑孝太郎です。
さて、今回はご近所トラブルの中でも、一番深刻な問題になりがちな境界の問題についてお話をしてみたいと思います。
想定するケースとしては、住んでいた一軒家を売ろうと思って不動産業者へ依頼をしたところ、不動産業者の調べでは、3年ほど前に新築された隣家の庭が、あなたの敷地を約30cmほど越境している場合を考えてみたいと思います。
この場合、3年前に建築されたときに隣家に伝えれば良かったかもしれませんが、必ずしも適時のタイミングで気づいて伝えられるとは限りませんし、そもそも境界線が曖昧な形でやり過ごしていたのでは、越境されている事実に気づくのも難しいかもしれません。
もっとも、実際にこのような事態が発生してしまった場合には、自己の所有する土地を隣家が占有している状態となっています。
この場合、お互いに現在ある状態のまま双方ともに異議もなく平穏に暮らしていれば、たとえあなたが所有する土地が隣人に侵食されていたとしても、その状態が長く続けば「時効取得」という制度によって、越境されている部分が隣家の人によって時効取得されてしまうリスクが存在します。
そこで、このような事態が生じてしまった場合には、まず、隣家と協議して越境部分を返還してもらい、今後の争いを防ぐため、境界に塀や策を作るか、隣家に越境部分が自己の所有する土地であることを確認する文書を作成してもらい、越境部分を隣人に貸すなどして、隣人による時効取得を阻止する必要があります。
万が一、隣家が当方の所有であることを認めない場合には、所有権に基づく返還請求の訴えを提起する等の方法により時効を中断した上で、土地の占有を回復する必要があります。
時効は中断すると、そのときから再度時効が進行していきます。
時効期間は改めて考えることになりますが、そのまま放置すると再度時効取得の問題が生じることとなりますので注意が必要です。