こんにちは。ファイナンシャル・プランナーの岩永真理です。
3月21日、平成29年の地価公示が国土交通省より発表されました。
全国平均は、全用途で2年連続の上昇です。
用途別には、商業地は2年連続の上昇で、もっぱら上昇基調を強めています。工業地は昨年の横ばいから上昇に転じました。一番気になる住宅地は昨年の下落から横ばいに転じました。
これでどの用途も下げ止まりではないかとの思惑が芽生え、今後の地価上昇に期待が膨らみます。
■地域別にみると
三大都市(東京・大阪・名古屋)圏
住宅地は大阪圏が昨年の上昇から横ばいとなった以外、ほぼ前年並みの小幅な上昇。
商業地は名古屋圏を除き上昇基調。工業地は総じて上昇基調を継続。
地方圏
地方四市(札幌市、仙台市、広島市、福岡市)では全ての用途で三大都市圏を上回る上昇。その他の地域においては全ての用途で下落幅が縮小、と改善傾向を示しているように思われます。
■上昇または横ばいになっている理由は?
住宅地・商業地について、国土交通省の発表によると以下の通りです。
住宅地
・全国的に雇用情勢の改善が続いている。
・住宅ローン減税等の施策による住宅需要の下支え効果もある。
商業地
・再開発事業等の進展
・外国人観光客を始め、国内外からの来街者の増加等により、主要都市の中心部などでは店舗、ホテル等の進出意欲が旺盛。
・金融緩和による法人投資家等の資金調達環境が良好なこと等もあり、不動産投資意欲は旺盛である。
つまり、低金利なために企業も不動産投資をしやすい環境になり、個人も雇用情勢が改善し、住宅ローン減税があるため、住宅需要もそこそこある、ということになるでしょうか。
果たして本当にそうなのでしょうか。
■この傾向は今後続くのか?
外国人来訪客の増加や低金利が続き、雇用情勢が良好で、住宅ローン減税が続けば、この上昇ないしは横ばい基調が続くのでしょうか。
インバウンド需要は、東京五輪までは続くのかもしれません。
中国人観光客も、政治情勢に大きな変化がなければ、今後も一定の旅行客は見込めるのかもしれません。
ですが、一般住宅の需要はどうでしょうか。
雇用情勢が改善したとはいえ、住宅の販売価格の上昇に追いつくほどの改善をしたとは言いがたいのも事実です。
経済産業省の報告によれば、平成 26 年度のべースアップの引き上げ率は、「1%以上~3%未満」が 54.4%で最も多い中で、
国土交通省の全国の不動産価格指数(住宅)の2010年を平均とした際に、マンションの価格上場率は5年で20%程度上昇しており、
年率に換算すると4%程度の上昇となり、給料の上昇率では追いつけないことになります。
また、今回の地価公示の中で、住宅地に限ってみると、
下落率が最も高い10地点の下落幅は全地域において多少減少していて改善がみられるものの、
逆に上昇率が高い10地点も、昨年よりも上昇幅が全地域で減少しています。
つまり、下落幅も少なくなったけれども、上昇幅も少なくなり、上昇地域と下落地域の差が縮小されたともいえます。
下落地域は改善したことで実質的には上昇と言えますが、上昇地域に関しては、上昇率が減っているので実質的には下落になります。
今後、商業地に関しては、インバウンド需要、低金利が続けば上昇ないしは横ばい基調が続くことも考えられますが、
住宅地に関しては人口減少、住宅価格上昇に見合うだけの給与上昇が見込まれなければ、
需要がしぼみ、ともすれば需要が先細ることもあり得ます。
今そこそこの価格で「売れる」のであれば、売り時という見方もできるのかもしれません。