はじめまして!
【現場主義の不動産運営コンサルタント】の伊藤隆晴です!
当社は不動産管理会社ですが、グループ全体で賃貸仲介、売買仲介、建設業、不動産コンサルティングと不動産全般をワンストップでお任せしてもらえる体制になっています。
管理会社といっても建物のハード面の管理だけでなく、不動産オーナーの代行者としてテナントとの折衝や不動産経営、運営のアドバイザーとして主に貸ビル、賃貸マンションに携わってきました。
近年、長年お付き合いさせていただいている貸ビル、賃貸マンションのオーナー様の物件がご売却になるケースが増えてきました。
プロパティマネージャーやコンサルタントの視点で、売買に関係する事例や想いをお話ししていきたいと思います。
私が“運営”コンサルタントと名乗っているのは、不動産は土地や建物そのもの価値より、どのように活用するのかによっての価値が大きくなると考えているからです。
不動産価値の最大化というのは当たり前に言われていますが、それは収入の最大化を意味していることが多いと思います。
収入は大切な要素ですが、果たしてそれだけでいいのでしょうか?
そんな疑問をいつも自問自答しています。
さて、今回は竣工以来25年以上総合管理とテナント仲介をさせていただいたビルが売却になったお話をさせていただきます。(前編)
『ビル経営開始と転機』
Aさんは都心で物販店舗を経営する自営業者で、店舗の2階が自宅となっています。そこから直線で100メートルほどのところに土地を所有しています。とはいえ、坪数も大きくなく単独でビルを建てても有効ではないということで、その土地のお隣の所有者Bさんと共同で貸ビルを建築することになりました。時期的にはバブルの初期頃です。建設費も上ってきてはいましたが、金融機関もしっかりと貸してくれました。
1フロア25坪弱の5階建てのビルが完成し、当社もテナント仲介をし、1階がレストラン、2階から上に事務所が入居しました。竣工後数年間は賃料も上昇傾向にあり、順調なスタートを切ることができました。
ところが、一つの転機が訪れます。バブル景気の終焉です。Aさんの店舗経営は堅実で地元に根付いたご商売をされていましたので、持ちこたえられましたが。共同経営のBさんは、厳しい経済状況になってしまったようです。BさんはAさんに自分の共有名義分の買い取りを申し出してきました。Aさんはこの申し出を受けて、買い取りすることにしました。単純に考えても借金倍増ですので、返済期間も延ばしての対応となりました。
『賃貸環境の悪化』
景気が後退すると、「真っ先に中小零細企業が影響を受ける」といわれますが、その仕事場を提供している中小ビルも「さらに真っ先に」影響を受けます。
経営状態の悪化や見通しが悪くなると、固定費を減らそうとするのは自然ないことです。かくして。賃料減額要請が次々と舞い込むことになりす。
管理をしている我々も、あの手この手で防御するのですが、周辺の相場が下がってくれば、それにも限界があります。
ビルを建築するときには、将来に亘っての収支の計画を立てますが、バブル期に建てたビルは例外なく「今後賃料が上昇していく」として右肩上がりの収入計画となっています。
それが、逆に下がっていくという予想外の展開になっていくのです。
Aさんはとても温厚で人柄が良い方です。私もまだ入社間もない頃に担当させていただき、穏やかな話し方に素敵な方だなと感じました。
テナントの減額要請にも「テナントあってのビル経営」とのお考えを持ち、柔軟に応じていました。
値下げも一度だけならいいのですが、更新時に毎回お願いされるという状態で、これは困ったな、という時期が長く続きます。
それでも、そのAさんの柔軟性と当社もグループを挙げて協力し、長期間空室になるようなこともなく、なんとかビル経営を続けていました。
(後編に続く)