前回の「不動産投資サラリーマン節税編①」にて検証したとおり、所得税の還付によりお金が返ってくる上に住民税の負担軽減になるとすれば、魅力を感じても「無理はない」と思います。
【前回①記載例題の再掲】
☆ 2,500万円の新築マンション(購入時諸費用150万円⇒別途自己資金より拠出)
☆ 自己資金なし・2,500万円不動産ローン(返済期間35年・元利金等返済・変動金利2.5%)
☆ 家賃例: 108万円/年(9万円/月)
☆ 必要経費例:24万円/年(2万円/月・管理費・修繕積立金、火災保険料、固定資産税など)
☆ 建物の減価償却費:33万円/年((建物1,500万円・耐用年数47年・定額法)
☆ ローン返済額:89,374円/月
☆ ローン利息相当額:609,348万円/年(返済回数12回目から23回目までの1年間)
⇒返済回数を重ねていくと利息相当額は徐々に減少する。
≪不動産所得計算例≫
:(90,000円-20,000円)×12ヶ月-330,000円-609,348円=▲99,348円の赤字
この節税メリットは、課税所得が高率な高所得者にとっては魅力が高まります。前回記載した上記の例題に当てはめると所得税の最高課税税率45%(※2)の方であれば、所得税44,700円の還付、住民税9,900円の軽減とあわせて54,600円と節税効果がさらに高まります。
とはいえ最高税率45%の水準に達するということは、課税所得が4,000万円以上(年収ベース4,500万円クラス程度)の方に限られますので、それほどの年収を得ている方にとっては、手間と時間をかけリスクを負った上で節税効果が年間5万円強という金額はあまりに少なく、はたして魅力的といえるのでしょうか?
その一方で、課税税率の低い(非課税・5%・10%程度)方ほど効果が低下することになります。一般的なサラリーマンが該当する課税税率(195万円超330万円以下)10%の方に当てはめると節税効果は、所得税・住民税を合わせても19,800円となり節税効果は限定的になります。
ここまでは、節税に焦点をあて記載してきましたが、不動産投資の「投資」という部分に焦点を当てて検討してみましょう。
下記の計算例は、上記の例題に基づいて家賃収入から管理費などの経費を差し引き、ローンの返済をした場合の現金収支です。
≪現金収支計算例≫
:(90,000円-20,000円-89,374円)×12ヶ月=▲232,488円の赤字
投資という観点では、再掲した例題においては物件価格100%のフルローンを利用したことにして、諸費用は自己資金から150万円を拠出したことにしています。その結果、150万円投資をしたにも関わらず、年間23万円強の赤字に陥ってしまいます。仮に諸費用も含めてローンを利用した場合においては、現金収支の赤字がさらに拡大することになります。
課税税率20%の方の例で求めた年間節税効果29,700円があっても、この赤字を補えません。僅かな望みを挙げるのであれば、このあと家賃の大幅な上昇し借入金利の大幅な低下でも起きない限り、損失が膨らみ続けることになり兼ねません。
さらに下記の注意点、すなわちリスクを負うことになります。
注意点
1. 家賃は、空室になれば大赤字!節税どころか損失拡大になる。
2. 現状の家賃は未来永劫同じではなく、一般的に経過年数により低下することで現金収支が悪化して損失拡大になる可能性がある。
3. エアコンやキッチン・お風呂設備などの劣化や故障による維持管理・修繕費がかかると損失拡大になる可能性が高い
4. ローン金利(変動金利)の上昇により、毎月の返済額が膨らみ兼ねず、損失拡大になる可能性がある
5. ローン返済完了後(設例では35年後)は、築35年が経過しており老朽化物件になっている可能性があるため、私的年金として活用できるかどうかの疑念がある。
投資用物件の収支計画は個人レベルで立案することは困難かもしれません。業者の作成した収支計画を参考にするのであれば、十分に吟味してリスクをしっかり認識した上で、対処法を知っておくことが大切です。
サラリーマンがおこなう節税目的の不動産投資は、本末転倒になっている可能性があることを知っておきたいものです。
※ 2 国税庁:タックスアンサー「所得税の税率」
http://www.nta.go.jp/taxanswer/shotoku/2260.htm