不動産投資の勧誘をおこなう販売業者の営業マンは、様々なセールストークを駆使して勧誘行為をおこなっています。
不動産投資のセールストークとして、サラリーマンを対象にした節税トークについて考えてみましょう。
≪セールストーク例≫
・ 建物の減価償却に加え、固定資産税などの税、火災保険料・建物維持・管理などに関わる経費およびローンを利用して利息相当額を経費として不動産所得を赤字にする。サラリーマンの給与所得と不動産所得の赤字で損益通算をおこない、結果的に「税金の還付」を受ける。
・ ローンの完済時期(職場の定年退職)=老後に家賃を「年金のごとく受け取る」という謳い文句。
サラリーマン(給与所得者)の場合、就労先より支払われる給料は、所得税や社会保険料は源泉徴収され、一部の例外(※1)を除いて経費は認められていません。そのため、「サラリーマンは節税が出来ない」といわれる所以でもあります。そこで節税目的の不動産投資の登場です。
本当に節税は出来るのでしょうか?
結論から記載すると、不動産所得が赤字になった年に限っては、確定申告をおこなうことで給与から源泉徴収され、既に納めた所得税の還付を受けられます。その意味では、「節税が可能」という解釈も間違いではありません。
しかし、不動産所得を赤字にするということは、「不動産事業が上手くいっていない」ということになりかねません。
一部には、不動産投資をおこなう上で経費とした減価償却費の効果が大きく会計上の経費に過ぎないため、実際に「サイフから出すお金ではない」という点を強調しているセールストークも散見されます。
それでは検証してみましょう
【例題】
☆ 2,500万円の新築マンション(購入時諸費用150万円⇒別途自己資金より拠出)
☆ 自己資金なし・2,500万円不動産ローン(返済期間35年・元利金等返済・変動金利2.5%)
☆ 家賃例: 108万円/年(9万円/月)
☆ 必要経費例:24万円/年(2万円/月・管理費・修繕積立金、火災保険料、固定資産税など)
☆ 建物の減価償却費:33万円/年((建物1,500万円・耐用年数47年・定額法)
☆ ローン返済額:89,374円/月
☆ ローン利息相当額:609,348万円/年(返済回数12回目から23回目までの1年間)
⇒返済回数を重ねていくと利息相当額は徐々に減少する
≪不動産所得計算例≫
:(90,000円-20,000円)×12ヶ月-330,000円-609,348円=▲99,348円の赤字
計算例として不動産所得を赤字にするため、あえて架空の例題を作成しています。この結果から、所得税の課税税率(※2)が20%の方であれば、不動産所得の赤字により19,800円の還付、住民税も9,900円の軽減が図られ、結果として「節税はできた!」ということになります。
しかし、本来の投資の目的が「節税」ではなく、「お金を働かせ収益を得ること」と考えれば、節税効果で「収益は上がるのか?」次回②で検証してみます。
※ 1 国税庁:タックスアンサー「給与所得者の特定支出控除」
https://www.nta.go.jp/taxanswer/shotoku/1415.htm
※ 2 国税庁:タックスアンサー「所得税の税率」
http://www.nta.go.jp/taxanswer/shotoku/2260.htm