「埋蔵文化財」とは、土地に埋蔵されている文化財(いわゆる、「遺跡」など)をいいます。
また、「周知の埋蔵文化財包蔵地」とは、土木工事その他埋蔵文化財の調査以外の目的で、古墳などの埋蔵文化財を包蔵する土地として周知されている土地をいいます。言い換えれば、古墳などの遺跡が土中に埋もれている土地であって、そのことが地域社会で認識されている土地がこれに該当します。
「周知の埋蔵文化財包蔵地」は市区町村の「教育委員会」などで確認ができます。
当該地において、建築や開発行為を行う場合には事前に「届出」が必要で、基本的には「試掘調査」が必要となります。その後、重要な文化財の存在が分かればこれを保護するための措置が必要になり、発掘調査の範囲や計画の変更などについて開発業者と行政で協議が行われます。
工事の範囲や地中深さなども行政との協議においては重要な事項で、これは、開発業者がどのような建物を計画している(鉄筋コンクリート建物の場合、深い杭が必要)かに関わってきます。
つまり、この行政との協議(行政判断)が土地の評価に影響を及ぼします。
したがって、土地に「文化的に価値があるもの」が埋まっていると、本来はこの埋蔵文化財を掘り出さなければなりません。そして、この発掘費用はこの土地の「所有者」が負担することになっています。また、行政判断で、土地に建築物の建築が制限される場合もあります。
では、実際に売却しない相続した土地に埋蔵文化財が埋まっていた場合、相続税上どのような評価減があるのでしょうか。
結論としては文化財が過去の調査、または、試掘調査等から「確実にある」と判断される箇所については、“単純に”、「必要な発掘調査費用相当額」の【80%】が評価減として認められています。
つまり、相続税土地評価が2億円であった場合、必要な発掘費用相当額が1億円だとすると、その80%=8,000万円を控除し、1.2億円とすることができます。
よって、相続における埋蔵文化財包蔵地の評価減で重要なことは、①埋蔵文化財が確実に存在するかどうか、②根拠のある掘調査費用相当額を算出できるか否かにかかっています。
ここで、相続税土地評価の問題点は、土地の評価に影響する事項であるはずの工事の範囲や地中深さなどの建築制限による土地の評価減が反映されないことです。
行政判断で、土地に建築物の建築が制限された場合、実際に建築できる範囲でしか土地に値段はつきません。調査発掘費用だけでなく、想定される建物に合わせた費用と期間も土地値には織り込ませる必要があるのです。
実際に売却する場合は、相続税土地評価のように、更地としての土地価格から“単純に”「発掘費用相当額」を控除すればいいという話にはなりません。
例えば、第1種住居地域・容積率300%の地域の「中高層マンション」が建ち並ぶ地域とした場合、対象地に重要な埋蔵文化財があることによって、杭及び地下階の建築が不可能で中高層マンションは建てられず、戸建分譲用地にしかならないとします。
そうなると売却価格は、発掘費用相当額の控除にとどまらず、建築制限による減価を考慮した価格にならざるをえません。マンション用地であれば3億円で売れるのに、戸建用地になると2億円でしか売れないということになります。
そうすると、容積率の高い地域における埋蔵文化財包蔵地は、「相続税土地評価2.5億円>時価評価2億円」という逆転現象もみられることになりますので、対象地が埋蔵文化財包蔵地に該当する場合は、事前対策が重要となるのです。
以上