Q 遺産分割未了のまま不動産を売却した場合に売却代金は誰のものになりますか?
A 売却代金は相続人全員のものとなります。また,売却代金を分配する割合は法定相続分のとおりです。
相続に関する法律相談を数多くお受けしていると,遺産分割がなされていない不動産の相談をお受けすることがあります。
遺産分割が未了で,所有名義が故人名義のまま放置されている不動産であっても売却することはできます。
相続不動産は売却できるのか?売却代金は誰のものになるのか?という点について具体的にご説明します。
1 相続になると不動産は共有状態となります
相続不動産については,相続開始時から相続人全員の共有状態になると考えられています。
その共有状態は,遺産分割協議によって不動産を取得する人が決まるまで継続します。
そこで,相続開始から遺産分割協議完了までの不動産は,法定相続人全員が共有者となります。
そして,その共有持分の割合は,各自の法定相続分のとおりとなります。
たとえば,配偶者と2人の子供が法定相続人の場合には,配偶者に2分の1の持分,子供らにそれぞれ4分の1の持分が認められます。
2 遺産分割前に売却した場合の代金の分け方
それでは,遺産分割をする前に不動産を売却した場合,その売却代金は誰が手にするのでしょうか。
不動産の売買代金を得る人は,不動産の所有者です。
ということは,遺産分割前に売却した相続不動産の売却代金は,不動産を共有している法定相続人のものということになります。
そして,その分配方法は,各自の共有持分にもとづいて決まります。
共有持分は,上記のとおり法定相続分のとおりとなります。
たとえば,配偶者と2人の子供が法定相続人になっている上記の事例において,不動産を売却したところ,3000万円で売れたけれども手数料が200万円かかったとします。
このとき,収入は2800万円です。結果として,配偶者は2800万円×2分の1=1400万円,子供らはそれぞれ2800万円×4分の1=700万円ずつの売却代金を受領します。
3 遺産分割前に不動産を売却する方法
遺産分割前に相続した不動産を売却する際には,いくつか注意点があります。
まず,相続人全員が不動産の売却に同意しなければなりません。
遺産分割協議が未了の場合,相続人全員で不動産売却についての協議を行わないと,不動産の売却はできません。
また,遺産分割前の不動産を売却するためには,いったん相続人らの名義に不動産登記名義を書き換える必要があります。
その上で,不動産を買主に売却してその所有名義を買主に移転します。
いきなり被相続人から買主に対して所有権移転登記をすることはできないので,注意が必要です。
相続登記のためには戸籍謄本や除籍謄本,改正原戸籍謄本などの資料収集も必要になります。
このように,遺産相続前の不動産を売却する際には,一般の売却とは異なる対応が必要になるので,覚えておきましょう。