「不動産営業 独立大作戦」 池田浩一
「いつかは独立」と考える不動産会社の社員は多い…
しかし、何の考えもなしに独立できるほど甘い世界ではない。
成功するためには社員であるうちにできる準備をこっそりしておこう。20年以上不動産会社を経営している池田浩一氏が社員のうちにやっておくべき独立までのノウハウを伝授する。
今回は独立時に必要な資金についてだ。(リビンマガジンBiz編集部)
今回のテ-マは「創業融資」です。創業融資とは事業資金のなかでも創業時の必要資金を借入目的とした金融機関の融資のことです。
創業融資として一般的によく利用されている日本政策金融公庫の「新創業融資制度」を基に説明しますが、将来的に他の金融機関の融資を利用する上でも非常に役立つ内容ですので、しっかりと覚えてください。
(1)創業融資を利用する2つの目的
第11話でお話した通り、宅建業者として開業するためには500万円~800万円程度の資金が必要です。その全てを貯蓄など自己資金で賄うことができれば理想的ですが、現実的にはひとりの力で用意できるほど小さい金額ではありません。そこで創業融資を利用し、自己資金では賄えない部分を補填するのが最初の目的です。
そして、もう1つの目的が金融機関に対して健全な借入実績を作ることです。健全な借入実績とは、事業計画通りに利益を上げ続け、確実に借入金を返済することです。あなたは融資で得た資金を事業において健全に運営し、金融機関はあなたから確実に元本と利息の返済を受ける。この相互関係の継続が信用の蓄積となり、事業者としてのあなたの資金力を拡大させるのです。
事業を継続する上で金融機関との関係は必須です。常に金融機関との信頼関係構築に努めるようにしてください。
(2)最大3,000万円まで融資OK?
新創業融資制度では、開業時に必要となる設備資金や運転資金に対し融資が受けられ、融資限度額は3,000万円(うち運転資金1,500万円)です。そして、自己資金要件は創業資金総額の10分の1以上となります。
ここで注意すべき点は、この自己資金割合はあくまでも創業融資を申込む上で必要となる条件であり、創業資金総額の90%の融資が可能であるということではありません。現実的な話になりますが、創業時のあなたには全く実績がありません。あなたが営業社員として、どれだけの数字を上げてきたとしても、創業後の事業に関しては、全くの未知数です。金融機関の立場からみると、あなたに融資額を返済するだけの力があるかどうかを判断するデ-タが何もないわけです。
第11話でもお話しした通り、創業融資では創業資金総額の最低50%、理想的には70%程度の自己資金を用意するよう努力してください。何故なら金融機関はあなたの用意した自己資金を、あなたの事業に対する姿勢、計画性として評価するからです。前述した通り、今後の信用の蓄積、信頼関係構築に対するあなたの姿勢は、確実に将来的な融資条件(融資額、金利、期間など)として表れてきます。創業融資を受けるための自己資金要件は、その大切な第一歩だと信じて計画的に準備してください。