「不動産営業 独立大作戦」 池田浩一
「いつかは独立」と考える不動産会社の社員は多い…
しかし、何の考えもなしに独立できるほど甘い世界ではない。
成功するためには社員であるうちにできる準備をこっそりしておこう。20年以上不動産会社を経営している池田浩一氏が社員のうちにやっておくべき独立までのノウハウを伝授する。
前回の、独立までの最初の一歩 <3つの分析>【前編】に続き、独立時に重要な3つの分析について解説してもらった。(リビンマガジンBiz編集部)
(画像=写真AC)
現在の自分の「ウリ」は何か
「現在の自分のウリは何ですか」
この質問は、どんなに経験を積んだ人でも、聞かれると胸に突き刺さってくる言葉です。向上心や探求心が旺盛な人ほど、その意味が分かると思います。
私自身も同じです。営業力にどれだけの自信があっても、更に難度が高く複雑な案件に直面し大失敗をすることがあります。それまでの自信が一瞬で打ち砕かれます。それでも、努力してその壁を超える力を身に付けるしかありません。
営業は常にその繰り返しです。不動産業はそのくらい奥が深く、どんなに知識や経験を積んでも「極め」のない世界です。だから面白いのです。
私が独立前に在籍していた会社は常に売却や購入、買い替えなどの依頼がありました。会社は地域に密着しており、地元の有力な地主や企業との関係が強かったためです。仕事には自信を持って取り組んでいました。
しかしある時、自分が大きな錯覚をしていることに気がつきました。取引を終えたお客様から笑顔で「もう何十年も、おたくの社長にはお世話になってるんですよ」と言われたのです。
そうです。私は、会社が長年掛けて積み上げてきた信用を自分の営業力と取り違えていたのです。愕然としました。
同時に、入社以来、自分自身の力で新規顧客、新規案件の開拓ができていたかを冷静に振り返り、無意識にこうつぶやいていました。「何もできていない…」。
常に営業成績はトップ、拍手喝采のなかで社長から手渡される「金一封」の心地良さ。そんなことに慣れていくなかで、なすべきことを完全に見失っていました。
そのことに気づいてからは、仕事に対する姿勢が本当に変わったと思います。
そうした中で、特に私が興味を持った業務が弁護士からの依頼案件でした。不動産ビジネスにおいて、弁護士からの依頼案件には、自己破産による任意売却、相続による遺産分割や離婚による財産分与を目的とした不動産処分などがあります。
営業部の責任者であった私は、会社に依頼される年間数十件におよぶ依頼案件のほとんどを担当することができました。
当然、通常の仲介業務と比較し、権利関係や内容が複雑な案件が多く、失敗もたくさんしましたが、より専門性の高い知識を学び経験を積むことができました。
また、独立をする上で、私の一番の課題は情報元の新規開拓だとも気がつきました。当時のことを思い出すと恥ずかしくなるほど、片っ端から弁護士事務所や債権者(金融機関、保証会社など)に、「物件査定だけでもやらせてもらえませんか」「破産申し立てや管財の案件はありませんか」と営業回りを続けました。
当時からお付き合いのある弁護士さんには、「ホント何回電話してきたっけ」と、今でも笑い話のネタにされるほどです。
どんな複雑な案件もスタ-トは不動産評価(査定)から始まります。
この無謀とも思える営業の繰り返しが、少しずつですが、確実に会社ではなく私自身の依頼案件という形となって現れ出したのは、営業開始から約1年が経ってからでした。
そして確実に「これなら勝てる。これが自分のウリだ。」という熱い思い、自信が芽生え出したのも同じ時期でした。
>>2ページ目:独立後の会社と自分の「ウリ」は何か(続き)