J-REITは株式同様、取引所で売買されている
J-REIT(国内の不動産投資信託)ネタを続けます。
そもそもJ-REITは、
銀行や証券会社の窓口で販売されている
一般の投資信託とは仕組みがまったく違います。
法律上も「投資信託」ではなく「投資法人」という区分になっています。
投資法人とは、
投資家から集めたお金で投資のための法人を設立し、
投資家たちは株式でいう場合の株主と同様の投資主となります。
投資主となった投資家は、
株式の場合の株主総会に相当する投資主総会に出席することができます。
そして、投資法人を売買したい投資家は、
取引所に上場している投資法人を、
取引所を通じて売買することになります。
現在、日本の投資法人は、そのほとんどがJ-REITで、
それ以外だと、ベンチャー企業などに投資している投資法人が
たった1銘柄だけ東京証券取引所に上場しているのみです。
不動産に投資する投資信託が
なぜ投資法人の仕組みを採用しているのかというと、
それは、
不動産ならではの流動性の低さが理由といえるでしょう。
オフィスビルやマンション、大型商業施設、物流施設などの不動産は、
債券や株式などの有価証券と違って、
売りたいと思ったときにすぐに売却できるようなものではありません。
たまたま買い手がすぐに見つかって売却できることもあるかもしれませんが、
常に即日売却できるようなものではないでしょう。
また、100万円や200万円といった小口の投資家のお金を
たくさん集めてオフィスビルなどをまるごと買って、
途中で一部の投資家が換金したいと言ってきたときに、
100万円分や200万円分だけオフィスビルの一部スペースを売却することなど不可能です。
したがって、不動産で運用する投資信託は、
投資家から集めたお金で不動産を購入したら、
その資金は、
時価による買い戻しを認めない仕組みで作られた
クローズドエンド型(=解約できないタイプ。⇔オープンエンド型/解約できるタイプ)
の投資法人にしたほうが安定的な運用ができるのです。
そして、解約を認めないクローズドエンド型にしてしまうと、
投資家が換金したいときに不便なので、
その投資法人を証券取引所に上場させることで、
取引所を通じて自由に売買できるようにしたのです。
ちなみに、不動産で運用している商品としては、
不動産特定共同事業法に基づく不動産ファンドと呼ばれるものが
一部の不動産会社などを通じて販売されていますが、
投資信託や投資法人とは異なる法律に基づいていて、
異なる仕組みとなっています。
割高・割安を判断できるNAV倍率
それから、J-REITについては、
上場して売買されているため、
1口当たりの純資産価格
(=組み入れ不動産の時価評価額の合計から負債などを差し引いた純資産総額を口数で割ったもの)
と、
1口当たりの投資口価格
(=証券取引所におけるJ-REITの時価)
との間に、かい離(価格差)が生じることがあります。
純資産価格よりもJ-REITの時価が高ければ、
割高に買われていることになり、
純資産価格よりもJ-REITの時価が安ければ、
割安に放置されていることになります。
その度合いを見る指標が、
「NAV(Net Asset Value)倍率」です。
これは、J-REITの時価を1口当たりの純資産価格で割ったもので、
数値が高いほど割高、数値が低いほど割安と判断されます。
2017年2月末現在、J-REITの各銘柄のNAV倍率は0.7から1.78の間の値となっています。
もちろん、NAV倍率が1倍割れの割安な銘柄がこれから必ず上がるとか、
NAV倍率が1倍超の割高な銘柄がこれから必ず下がるなどとは一概に言えるものでもありません。
しかし、組み入れ不動産で運用しているJ-REITの価格は、
当然に純資産価格と同程度の価格で取引されていておかしくないものです。
したがって、目先的な価格変動の予測に役立つほどではありませんが、
J-REITの個別銘柄を選ぶ際には、必ず見るべき指標だといえるでしょう。