一般的に不動産を共有の名義にすると、将来不動産を売却する時などに共有名義者の全員の署名捺印が必要になり売却しにくいなどのデメリットがあります。では賃貸不動産を共有名義にすることによるメリットはあるのでしょうか。
今回は、賃貸不動産を共有名義にすることによって受けられる税制上のメリットについて検討していきたいと思います。
青色申告の65万円控除を受けることが可能
青色申告の65万控除とは、一定の要件を満たす個人事業者が受けられる所得税法上の特典であり、要件を満たせば所得から65万円を控除してくれる制度であり、個人事業者であればぜひとも受けたいところです。
一定の要件とは
・不動産所得または事業所得を生ずべき事業を営んでいること
・複式簿記により記帳されていること
最近は会計ソフト等で通帳等を入力していけば、自然と複式簿記になっています。
・損益計算書と貸借対照表を確定申告書に添付し、期限内に申告書を税務署に提出すること
・不動産所得であれば一定の事業的規模があること
目安として、戸建てなどの貸家であれば5棟以上、アパートなどの一棟貸し等であれば10室以上あること、駐車場であれば50台以上あることが必要になります。
・事前に青色申告の承認申請書を提出していること
上記の要件を満たせば65万円控除の特典を受けることが可能ですが、これは共有名義であっても、名義人全員が65万円控除の適用を受けることが可能になります。
下記の具体例で実際に税金の違いを見てみましょう。
(具体例1)名義人が夫一人しかいない場合
家賃収入 2000万円
経費 ▲500万円
青色申告の特別控除 ▲65万円
上記の場合、不動産所得は2000万円-500万円-65万円=1435万円になり、単純に税率をかけると1435万円×33%-1,536,000円=3,199,500円となります。
(具体例2)夫と妻で1/2の共有持ち分の場合
夫 家賃収入 1000万円
経費 ▲250万円
青色申告の特別控除 ▲65万円
上記の場合、夫の不動産所得は1000万円-250万円-65万円=685万円になり、税率をかけると685万円×20%-427,500円=942,500円となります。
また、持ち分がちょうど1/2なので妻も同じく942,500円の所得税を支払うことになります。
ですから、夫婦合算の所得税は942,500×2=1,885,000円となり、共有持分のほうが単独所有よりも1,314,500円(3,199,500-1,885,000)も税金が安くなるのです。
今回は所得税のみのシミュレーションでしたが、実際には住民税や社会保険等も共有持分にしたほうが安くなる場合が多いので、税制上のメリットのみを考えた場合には共有名義のほうが節税できてお得じゃんという結果になります。
相続などが発生した場合には、共有にするか単独で引き継ぐが悩ましいところではありますが、この記事が少しでも皆さんのお役に立てれば幸いです。