3回実施された「住宅エコポイント」事業予算は合計4693億円

現在、耐震性や省エネ性能に優れた既存住宅の流通拡大を目指し、国による「住宅ストック循環支援事業」が行われているのを、ご存じでしょうか ――。

40歳未満の人(2016年10月時点)が自ら居住するために中古住宅を購入し、同時に「インスペクション」の実施と「既存住宅売買瑕疵(かし)保険」に加入。加えて、入居前に断熱性能を向上させるための「エコリフォーム」を実施すると、最大50万円の補助金が交付される仕組みです。

その財源には国費250億円が充てられており、すべての納税者が納付した税金が活用されています。同じく、2014年4月に導入された「すまい給付金」も同様、われわれの血税が使われています。消費税率の引き上げに伴う負担増を緩和しようという、政策上の狙いがありました。

さらに、住宅エコポイント制度も忘れてはなりません。最初は緊急経済対策の一環として2010年3月に、2回目は東日本大震災の被災地復興支援などを目的に2012年1月に、そして3回目は2015年3月に8%消費増税による住宅市場の停滞(反動減)をテコ入れすべく、合計3回にわたって実施されました。

事業予算は第1回目が2442億円、次の「復興支援・住宅エコポイント」が1446億円、そして3回目の「省エネ住宅ポイント」で805億円が充てられました。合計すると総額4693億円になります。

自分が収めた税金が戻ってくるのが「住宅ローン減税」の仕組み

住宅取得を後押しする施策として、その他には「住宅ローン減税」がありますが、その事業予算をご存じでしょうか。消費税率10%への引き上げが2年半延期されたことで、2016年11月、住宅ローン減税の適用期間も2年半の延期が決定しています。

住宅ローン減税によって、いくらの税金が戻ってくるかと聞かれると、大半の人が「住宅ローンの年末残高×1%」と答えます。では、その財源はどこから来るのでしょうか?―― ここに本稿の主題が隠れています。

住宅ローン減税でいう「減税」とは、本人が支払った税金が文字どおり当該制度を通じて戻ってくる「還付」に他なりません。にもかかわらず、多くの人が市役所や税務署が補てんしてくれるような錯覚に陥っています。還付金の財源が「自身が徴収された税金そのもの」であることに気付いていないのです。従って「事業予算」という発想は意味をなしません。

つまり、住宅ローン減税は「給付金」ではなく「還付金」なのです。だから自分が納税した税額以上は戻ってきません。前述した「住宅ストック循環支援事業」のような補助金制度ではないのです。くれぐれも誤解のないよう、正確な知識の習得に努めてください。

 
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