低価格志向を定着させた「ファストファッション」の脅威

突然ですが、読者の皆さんは「ファストファッション」という言葉をご存じでしょうか ――。

ファストファッションとは流行は取り入れつつも、低価格を重視したファッションを意味します。H&MやFOREVER21など、スウェーデンや米国のブランドが東京の銀座や原宿に旗艦店を続々とオープンさせたことで、近年、注目を集めるようになりました。

人気の秘訣は決して「安かろう悪かろう」ではなく、値ごろ感がありながら一定の品質を保持している点にあります。あまり洋服にお金をかけられない10歳代後半から20歳代の女性をメーンターゲットに、価格主導による販売戦略が奏功した成功事例といえます。

翻って、マンション市場も低価格志向という点では例外ではありません。かつて「アウトレットマンション」が一躍、脚光を浴びたのは記憶に新しいところです。今日、中古マンションの成約件数が伸びているのも、販売価格の値ごろ感が消費者に受け入れられているからです。いまだ所得環境の好転が期待しにくい中で、身の丈に合った物件選択をしているわけです。

第二のヒューザーマンションが登場するような気がしてならない

そうしたなか、筆者が心配しているのが“品質を低下させた”分譲マンションの登場です。

ご存じ、新築マンション価格は都心部を中心に強含んでおり、不動産経済研究所が1月19日に公表した「首都圏新築マンション市場動向2016年(年間のまとめ)」によると、2016年1年間に首都圏で供給された新築マンションの平均価格は5490万円、東京都区部は同6629万円まで上昇しています。

市場に詳しい人なら周知のことと思いますが、新築マンションは「売れる物件」と「売れない物件」の二極化が顕現しています。後者の物件に関し、価格競争のあまり、第二のヒューザーマンションが登場しないか気が気でないのです。

思い出してください。耐震強度偽装事件は「過剰なまでの値下げ圧力」が愚行の引き金になりました。ファストファッションのように、薄利多売による収益モデルが成り立つのであれば問題ないのですが、マンション販売はそうはいきません。“価格ありき”で商品設計を後付けするようなマンションは心配で仕方ないのです。安かろう悪かろうでは元も子もありません。

その点において、消費者も執拗(しつよう)に価格に執着するのは控えるべきでしょう。「安物買いの銭失い」だけは避けなければなりません。正しい選択眼を持ち、価格と品質のバランスに優れたマンション探しが求められます。

 
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