橋本秋人「使える空き家ビジネスのススメ」

社会問題化する「空き家問題」は不動産業界のビジネスチャンスでもあります。そこで、空き家に関する講演やセミナーで活躍する橋本秋人さんに、空き家を取り巻くビジネスの羅針盤になるような知識を紹介していただきます。読めば空き家問題、恐れるに足らずと思える連載です。(リビンマガジンBiz編集部)

(画像=写真AC)

空き家を更に有効に活用して収入を増やしたい、空き家そのものが老朽化などで収益物件としては使用に耐えないという場合には、建替えてから活用することになります。

空き家の建替えの場合、事例として最も多いのがアパート・マンションとしての活用です。

ひとつの事例を紹介しましょう。

【相談者の状況】

Aさん(50代)会社員 家族は妻、子2人 東京都在住

隣県に実家があるが、父母が亡くなり10年以上も空き家にしている。

土地は約45坪(時価約2,700万円) 建物は木造2階建約32坪、築35年

年に数回、自動車で片道1時間強をかけて実家を訪れ、清掃、風通し、草刈りなどをしている。

年間の維持費は、固定資産税等約8万円(土地・建物)、水道光熱費約1.5万円、自治会費0.6万円、その他火災保険料、通うためのガソリン代など。

当初は「愛着のある実家を残しておきたい」、「両親やAさん兄弟の荷物があり片付けるのが面倒」などの理由でそのまま保有、維持管理を続けてきたが、10年以上が経ち、さすがに管理に疲れてきた。また年間の維持費も10万円を超え、経済的な負担も感じている。さらに建物の傷みも進み、今後は修繕費も予測される。

ただし売却はしたくない。

【事業計画】

計画内容:空き家を建替えて賃貸アパートとして活用

建築計画:軽量鉄骨造2階建重層長屋 延床面積155㎡

プラン:1LDK1戸+2LDK2戸 計3戸 駐車場3台(内軽1台)

事業予算:3,800万円(建築費3,500万円 解体費160万円 諸費用140万円)

資金計画:自己資金300万円 アパートローン3,500万円(25年返済 金利1.2% 10年固定特約)

賃貸方式:サブリース

収入毎月28.0万円

支出毎月17.6万円(ローン返済13.5万円 サブリース2.8万円 固定資産税等月割額1.3万円)

収支:毎月10.4万円 年間124.8万円

投資利回り:(収入/事業予算)8.8% (収入/事業予算+土地)5.1%

自己資金投下利回り:(年間収支/自己資金)41.6%(自己資金は約2年半で回収)

【検討事項】

①将来の賃料下落や金利上昇に対応できるか

賃料が30%下落→毎月収入19.6万円に

金利が11年目以降2%に上昇→毎月返済14.3万円に

毎月収支:収入19.6万円>支出17.6万円(=14.3万円+サブリース2.0万円+固定資産税月割額1.3万円)

上記条件でも赤字には陥らない

②リスクへの対応

年間収支124.8万円のうち約半分の62万円を繰上げ返済用に積立てると

→10年間の積立額は620万円に

10年経過後に620万円を繰上げ返済すると、毎月返済額は10.3万円に減額できる

賃料、金利を①と同条件で計算した場合でも

毎月収支:収入19.6万円>支出14.1万円(=10.3万円+2.0万円+1.8万円)

と、さらに収支に余裕ができ、この賃貸経営がデフォルトに陥る可能性はより低くなります。

さらに、詳細な長期シミュレーションを作成、検討した上でAさんは計画を実行に移しました。

空き家の建替えの場合、事業計画の策定が最も重要な仕事になります。

調査が甘く無理な計画を進めると、実際に賃貸経営が始まった後にさまざま問題が生じ、オーナーとのトラブルに発展することもあります。

>>2ページ目:トラブルを防止する不動産投資の考え方とは(続き)

 
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