ソーラシェアリング(3)(遊休農地の利用方法)
1 農地法
農地は農業生産の基盤であって国民の食料の安定供給のために非常に大事なものです。したがって、農家の人が勝手に農業をやめて宅地にしてしまったり、農業を行わない人が農地を購入して、農地で農業を営まなくなっては困ります。そこで農地の確保と耕作者の地位の安定を目的として、農地を利用する際は農地法によって厳しい規制が加えられています。
それでは、農地の上空で太陽光発電をしながら、太陽光発電設備の下でこれまで通り耕作を続けていく「ソーラーシェアリング」をはじめるにあたり、農地転用許可が必要になるのか、必要な場合にはどのような許可を求めるのか、が問題になります。
2 平成25年農水省指針
平成25年に農水省は「支柱を立てて営業を継続する太陽光発電設備等についての農地転用許可制度上の取り扱いについて」という指針を発行しました。
この指針によれば、農地の上空に太陽光発電設備を設置しても、下での営農を継続すること等の条件を満たせば、農地転用許可を得ることが可能となり、ソーラシェアリングを始めることができるようになりました。
農地転用許可には、申請する内容によって農地法上3条、4条、5条の三つの種類があります。
このうち、ソーラシェアリングは、農家が自ら所有し、耕作している土地にソーラーシェアリングをするとして、4条許可が必要になります。
この4条許可は、農家が、自分名義の土地を、農地以外に変更する場合に必要とされる許可です。
従来は、農地を宅地や駐車場に変えようとする場合に必要とされていました。
もっとも、ソーラシェアリングのための農地転用許可は、最長で3年間までしか認められていません。
ただ、4年目以降も、それまでの実績に応じて、営農が適切に行われていると判断されれば、再び3年間の一次転用が許可されることになっています。
この場合の営農業が適切に行われているか、否かは次のような状況が考慮されます。
1、下ののうちの単収が地域の平均的な単収よりも2割以上減少していないか。
2.作物の品質に著しい劣化が生じていないか。
3.農作業に必要な機械などの効率的な使用が妨げられないか。
また、太陽光発電設備の下部で生産された作物の状況は毎年報告することが一次転用許可の条件ともなっていますので、毎年の作物の情況の報告も怠ることはできません。
たとえば、太陽光発電設備の下部で作物が生産されなくなった場合には、太陽光設備の撤去が必要となる点に注意が必要とされます。
3 最後に
太陽の光を受けて作物を育てる農業と、同じエネルギーで発電をする太陽光発電とは非常に親和性の高い産業です。
作物が必要とされるだけの日照を確保し、余剰の太陽光を電気に変えて売買するというソーラシェアリングは、遊休農地の利用方法として画期的であり、低収入に苦しんできた農家の方々の福音となることでしょう。
ただ農地法の規制は分かりにくい面も多く、専門家の助力が必要とされるでしょう。
以上