都市計画法上の用途制限(2)
平成29年1月30日
Ⅰ.はじめに
前回は都市計画の目的と都市計画の制定主体についての概要を説明しました。今回は前回の説明を踏まえて、都市計画に基づく用途地域について 説明します。
都市計画法は都市計画区域を定め、その区域が市街化を促進する市街化区域と、市街化を抑制する市街化調整区域とに分けられています。
そして、市街化区域を細分して用途地域その他の地域・地区が設けられています。
この中で最も身近なものが用途地域です。今回はこの用途地域の中で工業地域と工業専用地域を挙げて、これらの地域に対する都市計画法の規程及び建築基準法上の建築物の用途制限について、説明します。
Ⅱ.工業地域及び工業専用地域
都市計画法8条1項一号によれば、用途地域としては次のようなものが定められています。
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第1種低層住宅専用地域、第2種低層住居専用地域
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第1種中高層住居専用地域、第2種住居地域、準住居地域
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第1種住居地域、第2種住居地域、準住居地域
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近隣商業地域
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商業地域
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準工業地域
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工業地域
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工業専用地域
建築基準法はこの用途市域の特性に応じ、建築物の用途制限(同法48条)、建ぺい率(同法53条)、容積率(同法52条)を定めています。
ここに建ぺい率とは、建築面積の敷地面積に対する割合で、容積率というのは、建築物の延べ面積(各階の床面積の合計)の敷地面積に対する割合です。
都市計画法9条によれば、工業地域は「主として工業の利便を増進する為に定める地域とする」と規定され、工業専用地域は、「工業の利便を増進するため定める地域」と規定されています。
工業専用地域に「主として」という言葉が付与されていないのは、工業専用地域にあっては、工業施設以外の建築物は工場操業のため必要な最小限度におさえ、工業の利便をフルに高めようとする趣旨です。これに対して、工業地域は工業の利便を高めることを主とするけれども、それ以外の業務あるいは住居などが併存することも認めようという趣旨です。
建築物の用途制限では、工業地域では住宅も建築できますが、工業専用地では、住宅の建築が一切禁止されているのが特徴的です。
したがって、工業地域では、その地域に居住して近所の工場に勤めることが出来るのに対し、工業専用地域では、その地域外から通勤してこなければなりません。
これに付随して、工業専用地域では幼稚園、学校、図書館、病院等の建築も禁止されています。また、物品販売業を営む店舗、飲食店、ホテル、旅館、ボーリング場、マージャン屋、パチンコ屋等の遊戯施設、あるいは、料理店、キャバレーなどの遊興施設、個室付浴場、ストリップ劇場などの風俗営業の施設、劇場、映画館等の建築も禁止されています。ただ、神社、寺院、教会、養老院、託児所、公衆浴場、診療所などの建築は認められています。
これに対して、工業地域では制限はかなり緩く、工業専用地域で建築を禁止されている上記の用途のうち、住宅、図書館、物品販売業を営む店舗、飲食店、ボーリング場、マージャン屋、パチンコ店等の遊戯施設、料理店、キャバレー等の遊興施設などは建築出来るようになっています。
建ぺい率は、工業地域は5/10,6/10のうち、都市計画で定められるようになっており、工業専用地域では3/10, 4/10, 5/10,6/10の中から都市計画で定められるようになっています。
また、容積率については、工業地域、工業専用地域ともに、10/10,15/10, 20/10, 30/10, 40/10のなかから都市計画法で定められるようになっています。
以上の全体について、鵜野和夫他「不動産有効利用のための都市開発の法律実務」成文社 2006年・30-73頁参照)
Ⅲ.結び
今回は都市計画の中でも最も身近な用途地域について、工業地域と工業専用地域を例にとり、都市計画法上両者の用途がどのように規定され、両者の用途の違いがどこになるのか、また、建築基準法に照らし、両者の建築規制がどのように異なるのか、その理由はどこにあるのか、等について詳しく説明しました。
ところで、今回詳しく説明をした用途地域は、一般的に指定された地域・地区です。これに対して都市計画法上、特別の目的で特別の地区を指定して、その地区に適合した用途の順化や利用の促進、また、環境の保全などを図るために、特別の規制をしている地区があります。これを特別用途地区といいます。次回は、この特別用途地区の中で、臨港地区を例にとり、詳しく説明したいと思います。
以 上