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国際相続課税-相続税6
Ⅰ.はじめに
今回は、前回に引き続き、日本に不動産を残して外国に移住された方が、その後帰化し、外国人として亡くなられた場合の相続関係について、日本の相続税法上の問題の前提として、渉外相続の課税関係の基礎を紹介します。
Ⅱ.国際相続課税のあらまし
1.序
被相続人が、死亡時に外国に居住していた外国人であっても、相続人の国籍、相続財産の所在地などによっては相続税が課される場合があります。
相続税の納税者は、原則として、相続により財産を取得した個人です。そして個人の納税者は次の三者に分けることができます。なお、いずれの場合にも、日本国内にある財産については、課税対象となりますので注意が必要です。
(1)居住無制限納税義務者
(2)非居住無制限納税義務者
(3)制限納税義務者
以下、順に見ていきましょう。
2.居住無制限納税義務者
居住無制限納税義務者とは、相続により財産を取得した個人で、その財産を取得した時において相続税法の施行地、すなわち日本に住所を有していたものをいいます。
居住無制限納税義務者は、国内外の取得財産の全部について納税義務があります。すなわち、相続により取得した全ての財産に対して納税義務があることを意味します。
3.非居住無制限納税義務者
非居住無制限納税義務者とは、相続により財産を取得した次に掲げる個人((1)~(2))で、その財産を取得した時において相続税法の施行地、すなわち日本に住所を有しないものをいいます。
(1)日本国籍を有する個人(その個人または被相続人がその相続の開始前5年以内のいずれかの時において相続税法の施行地に住所を有していた場合に限る。)。
(2)日本国籍を有していない個人(被相続人がその相続開始時において、相続税法の施行地に住所を有していた場合に限る。)。
非居住無制限納税義務者は、あくまで「無制限」納税義務者であるため、国内外の取得財産の全部について、納税義務があります。すなわち、居住無制限納税義務者と同様、相続により取得した全ての財産に対して納税義務があることを意味します。
4.制限納税義務者
制限納税義務者とは、相続により財産を取得した個人で、その財産を取得した時において相続税法の施行地、すなわち日本に住所を有しないもの(3の非居住者制限者に該当するものを除く。)をいいます。言い換えれば、自身及び被相続人が海外に5年を超えて居住する者、又は相続開始時に被相続人が日本に住所を有していない外国籍の者が制限納税義務者に該当します。
制限納税義務者については取得財産のうち、日本国内にある財産についてのみ納税義務があります。
Ⅲ.結び
今回は、相続人間の国籍を異にする場合の相続税の計算の前提として、渉外相続の課税関係の基礎を紹介しました。
次回以降では、ここまでの理解を前提に、国際相続の計算につき複雑な具体例に即して紹介します。
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