私の実家の敷地内には、私が生まれたときから古い家が建っていました。1960年前後に建てられたその家は、父が小学生のときから結婚するまでの間に家族で住んでいた家です。父の結婚と同時に今の母屋が建てられ、その家は空き家となりました。土間だったところにはリヤカーなど農機具が置かれ、1F部分は農家の納屋的な役割を果たしていました。そして2Fには、古い着物や古道具などをたくさんしまいこみ、物置的な使われ方をしていました。つまり、30年以上の間、我が家の空き家は納屋・物置としてそこに佇んでいたのです。
しかし、農家だった祖父母が亡くなり、空き家を相続したのはサラリーマンだった父です。父が土を耕す可能性はゼロに近く、農機具も納屋も正直言って不要です。また、2Fに残されている古い着物や古道具たちも、どうしたものかとため息が出るばかりでした。結局空き家はそのまま物置として使われ、いつしか健康器具や古い電化製品などの仮置き場と称した、粗大ゴミ置き場のようになっていきました。いつかは壊さなくてはいけないと父はぶつぶつ言っていましたが、費用も馬鹿にならないし片づけが大変すぎて、手が付けられないというのが本音のようでした。
でも、よく目を凝らして観察してみると、1Fの奥や2Fに残されている古い建具や小さな家具などは、埃をはらえばよみがえりそうな素敵なものでしたし、天井を見上げるとそこには立派な梁が!
ですので、外観は古ぼけた昔の農家の佇まいですが、中は意外と古民家風の素敵な家に変身できるのではないかと、私は空き家に入るたびに漠然と想像したりしたものです。そして、私の妹もまた同じことを考えていたようで、なんと彼女がそれを実行に移しました!
妹はすでに結婚していたのですが、実家から車で10分ほどの隣町の賃貸マンションに住んでいました。妹は父に敷地内の空き家を使っていいか伺いを立て、その空き家をリフォームすることにしたのです。もちろん父は願ったり叶ったり!古い空き家には耐震工事が施され、残されていた建具や古道具を上手に利用し、古ぼけた空き家が、素敵な古民家風の家に生まれ変わりました。
壊したくても壊せないまま、30年以上もの間、物置と化していた空き家が素敵によみがえったのです。そのうえ娘家族が敷地内に住んでくれると、両親も大喜びです。今日本に増殖し続けている空き家問題をこんな風に解決できた1軒があるなんて、手前味噌ではありますが、最高ですよね!