私の実家の近所に、祖母の甥が住んでいます。その人は独身で、早くに両親を亡くし妹も結婚していますので、古くて広い一軒家で長く独り暮らしをしています。彼自身はサラリーマンでしたが、もともとは農家の家ですので田んぼや畑もあります。そして、彼自身還暦を過ぎ、広い一軒家をもてあましているようです。
さて、こちらのお宅、独り暮らしで古い家と田畑を持っています。万が一彼が亡くなったら、この家と田畑はどうなるのでしょうか?このケースですとおそらく相続人は妹だけです。妹は結婚して今は少し離れた地方都市に住んでいるため、いまさら家も田畑もどうしようもありません。妹にしてみれば、跡継ぎの兄がいたので実家の相続のことなどこれっぽっちも考えていなかったのです。
でも、彼には妻も子供もいませんし、両親も亡くなっていますので、相続人は妹しかいません。妹が相続すれば、その相続した空き家や田畑をいずれその子供たちが相続しなければいけなくなってしまいます。田舎の空き家や田畑は、そこに住む意思もなく農家でもない以上、相続してしまったら負担でしかない代物です。妹はどうしたものかとため息をつくばかりでした。
もうこうなると、いちばん考えられる方法は相続放棄なのではないでしょうか。彼の相続人全員が相続放棄をするのであれば、相続財産は国庫に帰属します。ただ、彼に不動産のほかに預金などの財産があった場合にはそれも放棄しなければならないので注意が必要です。では、相続放棄の手続きをすればそのまま空き家も田畑も放っておいてよいものなのでしょうか?答えはNOです。
相続放棄をして不動産の名義を放棄することができたとしても、相続財産管理人が決まるまでは、いずれにしても相続人が相続財産を管理しなければいけないことになっています。維持管理の費用はいずれにしてもしばらく相続人の負担となるということですね。また、相続財産管理人を選任してもらうためには、相続放棄の申し立てだけでなく相続財産管理人選任の申し立てもしなくてはいけません。その際には予納金をおさめなければならない場合が多く、100万円近くかかることもあります。
田舎の空き家や田畑を相続するとなったら大変です。親戚に子供のいない独り暮らしの方はいませんか?自分には関係ないと思っていたら、思わぬところで相続人となるかもしれませんよ。