まずは見つける努力をしましょう

民法における相続は、対象となる法定相続人全員を網羅しなくてはなりません。たとえ当人が生死不明の場合でも、その場に居ないからといって除外して手続きを進めるのは違法であり、無効になります。勝手に居なくなっておいて、残りの法定相続人にとっては正直いい迷惑かもしれませんが、とにかく見つけ出す努力を始めなくてはなりません。事を速やかに進めるためにも、被相続人(この場合は父上)がある程度の年齢になられたら、早めに手を打っておいたほうが無難ではあります。

捜索の基本となる「戸籍の附票」

行方不明者でも本籍は残っているはずです。本籍そのものに現住所は記載されていませんが、附票という便利なものがあり、住所の変遷がすべて記録されています。人がどこかに転居して住民登録する際には、本籍を記載しなければ原則、受け付けてもらえません。実はこの時点で、本籍のある自治体には連絡が行き、記録されることになっています。かなり次元の高い個人情報ですから、基本的には本人・配偶者・親(祖父母含む)・子(孫含む)・公権力・弁護士(または司法書士)しか写しを入手できません。ただし法定相続人は住民基本台帳法第20条第3項1の定める「自己の権利を行使し、又は自己の義務を履行するために戸籍の附票の記載事項を確認する必要がある者」に該当するため、写しの請求が可能とされています。

見つからなければ不在者財産管理人を選任する

附票に記載されている住所にさえ住んでいない場合は「不在者財産管理人」を選任します。要するにピンチヒッターで行方不明者に代わり財産の管理を引き受ける人ですが、他の法定相続人と利害関係のある人は選任できません。たとえばあなたの子を指名したのでは、あなたに有利になるように遺産分割協議を進めるに違いないので、公正さに欠けるわけです。行方不明者自身の子や配偶者は、選任可能です。その方が遺産分割協議において行方不明者の利害のための行動することは、むしろ制度の趣旨にかなうことになるからです。

候補者がいなければ家庭裁判所が選任する

行方不明者の親族などに適切な人がいない場合、他の法定相続人(たとえばあなた)からの申立により、家庭裁判所が弁護士や司法書士を不在者財産管理人に選任することになります。この場合、行方不明者の住民票上の現住所を管轄する家庭裁判所に申立てなければなりません。そのためにも、前述の「戸籍の附票」により、住民票上の現住所を把握しておくと便利です。ただ、専門家とは言え他人への委任ですから、不在者財産管理人を親族以外が務めることはトラブルの原因ともなり得ます。できるだけ早く行方不明者届を提出することもお勧めします。

 
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