悪臭かどうかの判断は主観的

基本的なスタンスは、悪臭の発生源に対して臭いを出さないように働きかけを行うという単純な図式ですが、そこに至るまでの道筋はケースにより様々です。以下に詳述しますが共通するポイントは、個人での直接行動は避け、ご近所や利害関係者を巻き込んで組織的に対応することにあります。気体・液体・固体を問わず物質は必ず何らかの匂いを発する上、それが不快であるかどうかは多分に個人の主観的な問題だからです。他人の家を訪問すると必ず、独特の匂いに気付くものですが、そこに住んでいる人は何も感じていません。あなたの家を訪問した人も必ず、あなたのお宅の匂いを感じています。このように主観的ですから、自分ひとりだけで「臭い」と騒いでも、解決に至るには困難を伴います。

同じ悩みを持つ住民と共同で対処しよう

マンションの場合、まずは管理会社か管理組合に相談してみることです。組織的に行動する基本的な第一歩ですし、同じように悪臭を感じている人がいるのか、つまり単なる主観ではなく客観的に臭いのかの判断が可能になります。ただし強めに訴えるほうが得策です。たとえば同じマンションの住民が悪臭発生源であった場合、管理会社としてはどうしても事を荒立てたくない心理が働きます。重い腰を上げさせるには、複数世帯で臨むなど強い姿勢が必要でしょう。戸建にお住いの場合、町内会に訴えるかどうかは難しいところです。町内会は管理会社と異なりあくまで非公式な団体ですから、悪臭発生源が町内会と関係の深い立場の家であったりすると、訴えた当事者の立場が難しくなるかもしれないという危惧もあります。同じ意見を持つ他の世帯と共同するなど、工夫が望まれます。

事業所の悪臭には規制する法律がある

悪臭発生源が事業者(飲食店など含む)か個人かで、過程は大きく異なってきます。事業者には悪臭防止法が適用され、悪臭の発生が客観的に認められると、対策を講じなければならない法的義務が生じます。客観的な判定には1.特定悪臭物質(現在22物質指定)の濃度、または2.臭気指数(嗅覚を用いた測定法による基準)のいずれかが用いられます。1は「腐った卵みたい」などと抽象的なものでなく、硫化メチル、イソブタノールなど化学物質名で特定されます。また2は国家試験をクリアした臭気判定士による6段階で数値的に定められます。主観の介在する要素が少ない分、フェアと言えます。

個人が発生源の場合の困難性

悪臭発生源が個人であった場合、対策は比較的やっかいです。悪臭防止法の制限を受けないため、おおむね交渉によらざるを得ないためです。状態が目視できる景観やデシベルなどの単位で測定できる騒音と異なり、臭いは主観的な要素が強く客観的に明示することが困難な場合があります。騒音では警察の出動を要請する根拠となる軽犯罪法も、臭いはカバーしていません。法的な解決を試みるには、民法709条の不法行為「故意または過失により他人の権利を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う」に基づき、悪臭が受忍限度を超えていると裁判所に認めさせる必要があります。弁護士などに相談することになりますが、そのためにも同じ被害を感じている住民と手を組むことが有利と考えられます。

 
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