メリットがあるのは一部地域のみ
結論から言うと、登記上の地目を農地とすることは簡単にできます。ただしそれにより固定資産税のメリットを享受するのには、いくつかの条件があります。まず、物件の所在地の区域を把握しなければなりません。日本の都市部は都市計画法により、市街化区域と市街化調整区域に区分されています。簡単にいえば開発された街中と未開発な郊外、というイメージです。このうち前者の市街化区域では、農地にも宅地と同じ固定資産税が課せられます。農地だから安くなる、ということはありません。すなわち、わざわざ農地に変更しても、ことさらメリットはない、ということになります。周りに住宅が立ち並んでいるような場所は、残念ながら市街化区域であることが多いです。
市街化調整区域なら農地への転換により優遇される
お持ちの物件が市街化調整区域にあるならば、農地にすることで固定資産税の大幅な軽減が可能になります。様々なケースがあるので一概に何割とは断言できませんが、「極めて低い税額」になることは確実です。農地の土地評価額は宅地と異なり、そこから得られる収益価格を元にするため、平方メートルあたり数十円~数百円という形で計算されます。500坪(1650m2)持っていても評価額は数十万円ということも多いです。それに対する課税ですから、宅地の場合とは比較になりません。
名ばかりの農地は認められない
土地登記上の名目(地目と言います)を農地にするのは簡単です。届け出ればよいだけです。ただし、税法上の農地として評価されるためには、その地で実際に農業が営まれていなければなりません。地目が農地となっているだけでは、だめなのです。つまり、農業を始める、登記を変更する、さらに農業を続ける、という覚悟と行動が必要になるのです。前述のように農地の土地評価額は収益価格で決められますので、空き地のまま収益がゼロならば、その土地は農地ではなくなってしまいます。また、一時的な利用状況でただちに税法上の農地とみなされることは少ないと言え、長い目で見た計画が必要になると言えるでしょう。
市街化区域でも農地課税相当になる制度が一応ある
市街化区域でも500m2以上のまとまった土地であれば、生産緑地にすることで農地並み課税の適用が可能になります。ただし当然、農業を営んでいなければなりません。また、農業を30年は続けなければならず、さらに生産緑地である限り売買はできません。ひとえに農業を継続するのみが目的となり、他の活用は一切できない覚悟が必要です。なお生産緑地が認められるのは一般の市街化区域のみで、三大都市圏の特定市街化区域では認められません。