前回は、空き家の譲渡所得の特別控除の制度の概要を取り上げましたので、今回は同制度について実務で想定されそうなケースを確認してみます。
<ケース1>敷地内に母屋と離れがある場合
地方の自宅だと、自宅の敷地の中に母屋と離れがあるというケースが少なくないと思います。このような自宅が空き家になり、この制度の適用を受ける場合にはどのような取扱いになるのでしょうか。このケースの場合には、その土地の面積を母屋と離れの床面積割合で按分して、母屋の床面積割合分の土地だけが適用対象になります。敷地全体が対象となる訳ではないので注意が必要です。
<ケース2>被相続人が老人ホームに入居していた場合
では、被相続人が老人ホームに入居していた場合はどうでしょうか。ずっと自宅に住んでいたものの、健康上の理由等で相続開始直前は老人ホームに入居していたということは、よくある話です。このケースでも空き家の譲渡所得の特別控除は適用対象になるのでしょうか。判断のポイントになるのは、「相続開始直前において」どこに住んでいたのかという点になります。このケースの場合には、相続開始直前に住んでいたのは老人ホームとなるため、この制度の適用対象とはなりません。相続税における「小規模宅地等の特例」とは取扱いが異なっていますので、注意が必要となります。
<どのような場合にメリットがあるのか>
では、どのようなケースの場合に、この制度を使うとメリットがあるのでしょうか。第1のケースとしては、取得費が低い又は不明のため多額の譲渡所得が生じる場合が考えられます。代々相続してきた自宅の敷地を譲渡する場合には、譲渡対価の5%を概算取得費として利用するケースが少なくないと思われます。概算取得費を利用すると、多額の譲渡所得が発生することが少なくないので、この制度を利用することで税負担軽減を図ることができます。
また、第2のケースとしては、相続税の負担がない相続人が譲渡した場合が想定できます。空き家の譲渡所得の特別控除の制度は、納付した相続税額のうち一定額を取得費に加算する「相続財産に係る譲渡所得の課税の特例」との選択適用とされていますが、逆に考えると「相続税額が生じない相続」の場合には、そもそも相続財産に係る譲渡所得の課税の特例が適用できないことから、空き家の譲渡所得の特別控除を活用すれば税負担を減らすことができると言えます。
今年度から新しく創設された制度ですが、制度の特徴を押さえた上で、有効に活用したいものです。
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