グローバル化が進展するに伴い、日本国内に不動産を残したまま海外で暮らしている方も珍しくない時代となりました。 また、外国人の方が国内の不動産を所有されているケースも増加してきております。そのような方が、何かの機会に国内不動産を譲渡される場合がありますが、その場合には譲渡対価を支払う買主側にも注意すべき点が出てきます。それは、「非居住者に支払う不動産譲渡対価から源泉所得税等を徴収する義務がある」という点です。

 通常、不動産の売主が国内に住所を有している居住者の場合には、両者が合意した譲渡対価を買主が支払えば問題ありませんが、売主が非居住者の場合には譲渡対価を支払う際に10.21%(復興特別所得税含む)の税率で源泉徴収する義務が生じます(所得税法212条ほか)。

 この非居住者に支払う不動産譲渡対価の源泉徴収については、過去に争われた事例も存在します。平成20年9月25日裁決の事例では、売買契約書に添付する売主の印鑑証明書の住所が国内であったことから居住者と考えていたが、実際には取引成立前から海外で生活しており、住民票も国外に転出していたことから、非居住者に該当すると判断されています。不動産の譲渡対価の金額は、大きな金額となることが多いので、源泉徴収が漏れると、それに伴う不納付加算税の負担も大きくなる傾向があることも注意すべき点になります。

 最近では、国内に親が住んでいたが、子は国際結婚などで海外に住んでおり、その海外に住んでいる子が、相続により親が住んでいた国内の不動産を取得した後に、その不動産を譲渡するというケースも出てきております。

 非居住者に支払う不動産譲渡対価の源泉徴収については、私も相談を受けたことがありますが、通常の取引では出ない論点のため、うっかり忘れが発生しやすく、後から「どうしたら良いですか?」と相談されるケースが多いです。取引の際には、この点もしっかり確認の上で売買契約を取り交わしたいものです。

<参考>非居住者等から土地等を購入したとき(国税庁)
https://www.nta.go.jp/taxanswer/gensen/2879.htm

<不動産・相続・事業承継に関するご相談は、花光慶尚税理士事務所まで!>
事務所HP http://flowerlight-tax.com/

 
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