今回は、不動産の取得費に関する注意点をご紹介したいと思います。個人の譲渡所得の金額は、譲渡価額から物件の取得費や譲渡費用を差し引くことで求めます。そもそも譲渡所得の申告は、譲渡があった年の翌年3月15日までに申告するのが原則であり、不動産の譲渡自体が申告のタイミングから近い時期に行われているので、譲渡価額の金額は売買契約書などで比較的容易に知ることができます。譲渡費用も取引の仲介を行った不動産会社等が領収証を発行するのが通常なので、こちらも比較的分かりやすい。あとは、取得費が分かれば譲渡所得の金額を導き出せることになります。
取得費とは、資産の取得に要した金額に、その後支出した改良費、設備費を加えた合計額をいい、建物のような減価償却資産の場合には、所有期間中の減価償却費相当額を差し引いて計算します。なお、土地や建物の取得費が分からない場合には譲渡価額の5%を取得費(概算取得費)とすることができますが、概算取得費を使うと譲渡所得の金額が大きくなりやすいので、これは「最後の手段」として取っておきたいのが心情です。
そこで、取得費の調査を行うことになるのですが、不動産は数十年単位の長期保有や相続により購入者の子世代に引き継がれているケースが珍しくないため、納税者に確認してもよくわからないと言われてしまうこともしばしばです。実務上は購入時の売買契約書などの資料を収集して取得費を求めることになるのですが、注意すべきケースも存在します。それは、「購入時に買換えや交換など取得費の引継ぎの特例を受けている」ことがあるからです。
買換えや交換の特例を受けると取得費を引き継ぐ代わりに譲渡所得税の圧縮を図ることが可能なのですが、今回売却した不動産を購入した時に買換えや交換などの特例を受けていると、取得費引継ぎの影響で今回売却した不動産の取得費の金額が少なくなる場合があり、結果として譲渡所得の金額が大きくなる可能性があります。
なお、税務署では買換えや交換のような取得費を引き継ぐような特例を受けている場合には、内部資料用の書類を作成して別途管理しているようです。したがって、過去に取得費が引き継がれるような特例を受けていたにもかかわらず、それを失念して申告した場合には思わぬ税負担が生じる可能性があります。やはり、徹底した調査に基づき申告することが転ばぬ先の杖と言えそうです。
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