前回のコラム「キーワードで読み解く不動産投資(その6:借地権)」でも紹介したように、自分の不動産を自由に売却できないというのは、相当なもどかしさがあることでしょう。
そこには、複数の人の権利が絡んでいることが、その原因となっています。
所有している不動産を自由にできない事情
一つの事例としては、賃貸住宅が考えられます。
賃貸住宅に住居者がいる場合は、勝手にその物件を売却することはできません。
そのほか、テナントの入っている賃貸ビルについても、そこに賃借人がいれば売却はできません。
メリットともデメリットともなる賃借人
通常は、賃借人がいるということは、そこから賃料が得られるので、物件所有者からしてみればありがたい存在であり、売却するにあたっても、価値を高めてくれる要素ともなるものです。
ただ、どの物件でも、いつもでも賃貸物件としての高い価値を維持することは、非常に困難です。
そこで、建物を一旦取り壊して、新たな建物に建て替える時期がやってきます。
このように、条件が悪くなり取り壊して新たな建物を建てることを意図した場合、この賃借人は一転して厄介者に変わります。
つまり立ち退いてもらう相手となります。
立ち退きの問題が出てきた時点でも、すでにその不動産価値は押し下げられてしまいます。
なんとか不動産価値を押し上げようと、立ち退きを完了させるためには、大きなコストがかかります。
一つには、住居人との交渉というコストであり、もう一つは立ち退き料という金銭コストです。
定期借家の適用
このような問題を回避する方法に、定期借家というものがあります。
これは賃借の期間を契約時に決めておく方法です。
このように最初に契約期間を決めておけば、いざ売却しようとした際に住居人との交渉は避けられますし、不動産価値が押し下げられることも避けられます。
この定期借家という仕組みが法的に整備されたのは2000年のことですので、それ以前に契約している場合は新たに契約を結び直す必要があります。
賃借人がテナントであれば、棚卸しの時期など、定期借家に切り替えられるタイミングを見計らって契約し直しましょう。
その時に若干賃料が下げられてしまったり、交渉が複数回に及ぶなど様々なコストがかかるとしても、将来的な売却益など考えれば安く済むかもしれ得ません。