不動産を売買する場合、キーワードで読み解く不動産投資(その3:ローン申請に必要な書類)でも書いたように、複数の書類が必要となりますが、極めて重要度の高いものがあります。
不動産取引における最重要書類
一つには土地の権利証と一般に呼ばれている登記済権利証です。法律が改正された現在は、12けたの数字・記号を組み合わせた登記識別情報となっていますが、土地の所有書を保証する極めて重要な書類です。
もう一つは、建物に関する書類ですが、検査済証と呼ばれる書類で、一般的に済証(すみしょう)と言われるものです。これは建築基準法に則って検査が行われたということを証明するものです。法律に義務付けられたこの検査を完了するためには、建築主は安くない手数料を用意して、国または民間の検査機関に確認してもらわないとなりません。
ただ、このコストを投じて検査を行ってしまえば、いわばお墨付きを得たものとして、売り主は安心して買い主を探すことができます。
同時に、この済証があるということは、買い主にとっても大きなメリットがあります。
済証が持つ買い主に対するメリット
通常、買い主は不動産購入にあたり、銀行に不動産購入のための融資を申請します。申請を受けた銀行にとっても、融資したお金がきちんと回収できるかは、大きな問題です。
そこで融資相手が購入しようとしている物件に済証がないとすれば、銀行にとってもリスクが生じます。何せ、違法物件かもしれないので、きちんと売却益なり運用益を得られるかが分からないのですから。
また近年では企業のコンプライアンスが強く意識されていますが、特に金融機関はその意識が強く、コンプライアンスに反する売買に関わる融資申請者と取引することは考え難い状況となっています。そうなると、売り主が売りたく、買い主が買いたくても、なかなか売買が成立することはないという状況が生まれてしまいます。
済証という書類一つがないせいで、せっかくの取引が失敗に終わってしまうわけです。
ただ、この済証がないというケースはかなり頻繁にみられます。これによって不動産市場の膠着を避けるために、国は施策を打ち出しました。
2014年に国がガイドラインを改正し、中古建築物つまりストックの有効活用を狙いました。
この中で、済証がない場合でも、建築確認申請をして、その調査を経れば済証を持つのに準ずるとするとされました。
だからと言って、これで済証が本当にある場合と同じように取引が進んだわけではないようです。
あくまで「準ずる」ものであり、ガイドラインでも済証に代わるものではないと言っているので、購入希望者も二の足を踏んでいるのが実情のようです。
つまり、済証はやはり決定的に重要な書類ということです。
このように、書類一つを見ても、売買が成立するか否を決定づけるものになります。
必要書類を揃えることは、売り主にとっても大事なだけではなく、買い主にとっても決定的なものになるということを頭に入れておきましょう。