都市部から遠く離れ、交通の利便性も悪い地域に佇む一軒の古民家・・・。

少し前なら、ほとんどのケースで「厄介な存在」だったでしょう。特に、日本は住宅を建てる際は「新築信仰」強く欧米のように古い家をリフォームして使い続けるという意識が低かった。

金銭的にも、二束三文のような安価で売れれば幸運、売ることもできず解体費用に多額の出費、なんて古い住宅の処分で珍しいことではありませんでした。

しかし、近年は中古住宅の市場に多少の変化が。



「古民家ブーム」

古き良き日本的な住宅である「古民家」に、注目が集まっています。古民家の活用方法は大きく分けて2つ。

一つは従来通りの「住居」として。田舎暮らしや自然の中での昔ながらの生活、に憧れている人も多く一定の需要があります。行政側は、地方の定住・地域活性化政策として支援。

もう一つは「商業施設」として。古民家カフェや民宿などの宿泊施設、農業・田舎体験施設など様々な用途があります。行政側は、観光客の呼び込み政策として支援。


「商業施設」としては、各地で成功事例も。

その代表例の一つが「徳島県三好市東祖谷」。平家の隠れ里としての伝説が残っており、かずら橋が掛かる深い渓谷の祖谷渓など観光資源価値の高い地域ではあったものの観光地としての人気・知名度は高いとは言えませんでした。

そこで、2008年に三好市は「地方の元気再生事業」を開始し、宿泊業に重点を置きます。日本古美術に造詣の深い作家でありアジア文化研究者のアメリカ人、アレックス・カー氏を招き、茅葺の古民家をリノベーション。コンクリートのホテルを建設するのではなく、祖谷地域の集落に300年伝わる茅葺の古民家を活用することで宿泊施設自体を観光地にすることにしたのです。

結果、2015年には祖谷地域へ来る観光客は大幅に増加し、約2000人(うち、外国人観光客約250人)もの宿泊客を獲得。



地方で日本の農業体験や田舎体験ができるツーリズムの拠点として活用されています。

地元の食材を使用した料理を食べ、体験型ツアーで地域の人と交流し、虫の音を聞きながらくつろぐ。ヨーロッパでは一般的な「田舎暮らしのスローライフを楽しむ」、という休日のスタイルが日本でも流行しつつありますが、日本のスローライフの中心には古民家という空間が不可欠なようです。






ただ、古民家も千差万別。傷み具合や立地、築年数、周辺環境によって価値は大きく変動します。個人、もしくは小さな事業者に相談した上で改修し古民家ビジネスをしても、成功することはかなり厳しい道のりであるのが現実。実績のある大手古民家業者やNPO、自治体とよく相談し、売買や賃貸を行った方が賢明でしょう。


古民家を活用した宿泊施設やカフェ、観光拠点などは多数存在します。多くの人が注目する「古民家ビジネス」。

今まで厄介だった古い家に、思わぬ価値が見つかられるかも・・・?

 
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