台北の異常な「住宅事情」
「台北は天竜人が住むところ」。
こんな言葉が台湾のネット上では一般的に使用されています。
「天竜人」とは、漫画「ワンピース」に出てくる特権を持った貴族たちのコト。つまり、台北の不動産価格が高騰し過ぎて一般人にとっては手の届かない高嶺の花になっているというのです。
台北の不動産価格は日本よりも高く、高騰し続けていました。日本でも数億単位の高級マンションは存在しますが、「マンション一室・16億円」という物件も。また、坪単価1200万円といった価格の不動産も販売されており、まさにバブルそのもの。
こんな異常な不動産価格では、台北の若者が自身の部屋を借りることさえ難しい状態。広いフロアに簡単な仕切りを作り、その中で暮らす正社員の若者も多く存在しています。正社員ではなく、非正規低賃金の若者はもっと悲惨で、地下に潜ったりボロボロのアパートを友人たちとシェア、という涙ぐましい努力。
台湾の不動産高騰の始まりは2002年。
政治的な問題から規制していた「中国からの投資」を解禁。翌2003年から、不動産価格上昇が始まります。中国大陸に進出した台湾の富裕層も不動産投資を開始し、台湾・中国双方の投資合戦という状態に。特に、中国との経済的結びつきを重視する馬政権が2008年に誕生し、台湾の不動産投資は過熱。
住宅が買いにくいとされる日本でも「住宅価格年収比」は5倍ですが、台湾では16倍という異常な不動産高騰の結果、台北が「天竜人の住処」となってしまったのです。
2016年にはじけた台湾の不動産バブルと日本のこれから
異常な不動産狂乱も、2016年に終焉をみせます。
2016年に「独立」とは明言しないものの、中国と距離を置いた政策を基本とした蔡英文政権が発足。中国は警戒をし、経済的な圧力をかけ始めます。特に、台湾が依存していた中国からの観光面を絞ることに。
ビジネスも縮小傾向となり、2016年1月ごろから台北郊外の不動産価格が下落し始め、不動産価格は下げ留まりません。台湾の経済的にも、悪影響を及ぼしています。
「中国に飲み込まれるのは嫌だ」「不動産高騰は嫌だ」といった台湾の民意と経済的な問題の間で、台湾はいままでの中国経済依存政策のツケを払っている状態。
また、台湾の不動産バブル崩壊の陰で、国際的な自由経済の中にありながら中国は簡単にビジネスを国家統制できる政治体制であることが明白です。
日本でも、尖閣問題などの政治的摩擦が起きる度に、中国人観光客が激減し観光業界に大ダメージを受けることもあります。近年では中国からの直接的・間接的含めた不動産購入が問題となっていますが、中国からの不動産購入を拡大した状況で、中国が日本への不動産購入を制限するという方向に舵を切ったケースの危険性も論じた方が良いかもしれません。