国土交通省が、3月21日に平成29年度地価公示を公表いたしました。
地価公示とは、毎年1月1日時点の地価及び対前年の変動率を発公表(公表される価格を「公示地価」と言います)するものであり、各市区町村ごとに、その地域の標準的な画地規模・形状等の土地を複数指定し毎年調査を行っております。実際の調査は、各市区町村毎に国土交通省より任命を受けた不動産鑑定士が担当する形式をとっております。
私は現在、横浜市港南区、磯子区、金沢区エリアを担当しておりますが、この地価公示に関してはTV等でも数多く報道され、私も神奈川新聞社様の取材を頂き、神奈川県内の地価に関してコメントを掲載していただいております(3月22日付の朝刊)。
ここ数年、全国でトップの公示地価を維持している「中央-22(東京都中央区銀座4-5-6、山野楽器銀座本店)」は、1㎡あたり5,050万円。前年は4,010万円であったので、実に年間で25.9%の上昇という結果です。では、この公示地価は、果たして実際の取引価格(実勢価格)を反映しているのでしょうか?
東京都中央区銀座4-5-6は最も繁華で高額な銀座四丁目交差点に位置します。
頻繁に土地取引が行われないため情報はほぼありません。こういった商業地の場合には土地・建物一体としていくらで貸せるかを想定し、利回りによる収益計算に基づいた不動産取引が行われます(土地の場合のみの取引でも、想定建物により収益計算を行います)。なかなか実際の土地取引相場を把握することは困難ですが、私が数年前にこの付近での不動産取引を当事者にこっそり教えて頂いた際、1坪当たり1億5千万円程度で、つまり1㎡あたり約4,500万円で売買されていました。
以前では、公示価格と取引価格(実勢価格)は乖離しているという風潮が不動産業界にはありました。しかし、近年のホテル等を中心に商業用地の需要がますます高まっており、徐々に公示地価は実勢価格には近づきつつあるものと考えられます。
ただし、銀座4丁目というプレミアムで不確定な要素により、取引価格が爆発的に跳ね上がる可能性のあるエリアであるとも言えます。
他のエリアどうでしょうか?
私が実際に不動産の評価を行ったエリアに関して分析してみたいと思います。
例えば、
① 町田市東玉川学園の住宅地
小田急小田原線「玉川学園駅」から徒歩10分少々の場所です。
地価公示地「町田-31」は1㎡当たり15万3,000円。
私が実際に評価した、近くの土地の評価で1㎡当たり15万4,000円。
概ね同水準と把握できました。
② 千代田区神田須田町の商業地
東京メトロ銀座線「神田駅」よりすぐの好立地。
地価公示地「神田5-4」は1㎡当たり258万円。
私が実際に評価した、近くの土地の評価で1㎡当たり396万円。
実勢価格は約1.5倍といったところでしょうか。
③ 三浦市南下浦町の住宅地
京急久里浜線「三浦海岸駅」より徒歩10分少々。
地価公示地「三浦-10」は1㎡当たり74,000円。
私が実際に評価した土地の近くでは1㎡当たり56,000円。
実勢価格は約0.75倍程度と把握いたしました。
このように地域によってバラツキがあるのが現状です。
では、なぜこのようなバラつきがあるのでしょうか。
公示地価は、相続税や固定資産税等の税額を決定する全てのベースとなる価格です。
バブル期の急激な地価上昇や、その後長らく続いた不況に伴い、地価は乱高下いたしました。
しかし、その変動を全て反映させれば、相続人や土地所有者から徴収する税額も激しく変動してしまい、税収の安定につながらず結果として徐々に乖離が生じてきてしまったものと考えられております。
よって、物件購入等を考える際には
「その地域の公示地価が、どの程度実勢価格と乖離しているのか」をきちんと把握したうえで取り組まれることをお勧めいたします。
文中にも登場した山野楽器 副店長宮﨑氏は、編集部の取材に「公示地価で全国1位になったことは光栄であるが、それに恥じない接客を心がけていきたい」と語った。(スマイスターMagaZine編集部) |