マンションマニア行政書士の藤野です。
さて、今回は住宅ローン=金銭消費貸借のちょっと法律的なはなしです。
銀行ローン・金銭消費貸借契約
さて、通常、マンションなどの住宅を購入する場合、銀行ローンを使うのが一般的ですが、
銀行ローンでお金を借りる契約のことを「金銭消費貸借契約」といいます。
民法第587条には、
消費貸借は、当事者の一方が種類、品質及び数量の同じ物をもって返還をすることを約して相手方から金銭その他の物を受け取ることによって、その効力を生ずる。 |
とありますが、
消費貸借とは
①借りたものを使って消費し
②返すときは、同じものを調達して返す。
ことなのです。
要するに、住宅ローンは、「借主(不動産の購入者)が、貸主(銀行)から金銭を借り入れてその金銭を消費し(⇒つまり、代金として支払うということです。)、その借入額と同額の金銭(利息付の場合は利息分も含めて)を貸主に返済するという契約のこと」をいいます。
つまり、不動産売買契約における、住宅ローンは、借入時に一旦買主の口座に金融機関から融資額が入金し、すぐに売主に支払いを行いますから、この時点で借り入れた金銭は「消費」されたことになります。
抵当権って?
そして、住宅を購入するために、住宅ローンを金融機関から借り入れる場合、購入者は購入する住宅に抵当権を設定し、抵当として金融機関(保証協会)に差し入れるのが一般的です。
抵当権とは、
民法第369条(抵当権の内容)
抵当権者は、債務者又は第三者が占有を移転しないで債務の担保に供した不動産について、他の債権者に先立って自己の債権の弁済を受ける権利を有する。 |
つまり、簡単にいうと、
① 債務の担保に供した物(この場合は、不動産です)につき、
② 他の債権者に先立って、自己の債権(銀行ローンの残金のことです)の弁済を受ける権利⇒換金方法は多くの場合「競売」などの物件の売却ですね。
③ 質権とは異なり、引渡しを要しない。(→質権は、モノを質入れしてお金を借りるので使えなくなります。)
④ したがって、所有者が抵当権成立後も引き続き使用・収益をすることができる→つまりマンションを銀行ローンで購入しても住むことができるのです。
ということです。
モーゲージバンクとフラット35?
英語でいうとモーゲージmortgage(譲渡抵当)といいます。ちなみに、モーゲージバンクは、住宅ローン専門の金融機関のことを言いますが、
2003年に独立行政法人住宅金融支援機構(住宅金融公庫)が住宅ローン債権の証券化支援事業を開始したことにより【フラット35】が誕生しました。
公庫は独立行政法人ですから、国の機関と同様で、フラット35は国策的なものなのです。
証券化とは、サブプライムローンで有名になりましたが、ローンの債権を証券にすることにより、投資資金を集めて貸し出すのです。
フラット35は民間金融機関が貸し出した住宅ローン債権を、機構が買い取った上で証券市場から資金調達する仕組みで、フラット35を利用することで、貸し出しの原資となる資金を有しない金融機関も住宅ローンの取り扱いができるようになりました。この、自社の資金からの貸出ではなく、【フラット35】を中心とした住宅ローンを取り扱う金融機関が通常の銀行や信金とは区別され『モーゲージバンク』と呼ばれます。
ちなみに35とは35年ローンのことで、金利の変動がない35年ローンです。
銀行住宅ローン契約書の典型例
さて、金銭消費貸借契約の話に戻りますが、金銭消費貸借契約と抵当権設定契約をまとめて一つの契約書に盛り込むことが多く(絶対ではありません。)。金銭消費貸借抵当権設定契約のように呼ばれることがあります(実務上は単なる「金消契約」と言います)、以下の条項の記載が多く見受けられます。
1.借入条項:借入金額・利率・返済期日・遅延損害金
2.期限の利益の喪失(期限前の減額返済義務):返済の延滞や債務者の信用状況の悪化(破産申し立てなど)が生じた場合の措置
3.抵当権の設定
4.不動産の売却・賃貸借の制限・・・居住用の不動産に対するローンなので、原則賃貸は禁止です。
6.火災保険への加入・・・特にない金融機関もあります。
7.保証人または保証会社による保証・・・保証委託契約として別契約の場合もあります。
みなさんも、住宅ローンンを借りるときに、銀行の契約書をみて、何のことだかわからずに契約してしまう人が多いのではないかと思いますが、
〇金銭消費貸借契約
〇抵当権
のはなしを思いだしていただければ幸いです。