皆様こんにちは。ファイナンシャルプランナーの近藤喜隆です。「FP試験対策シリーズ」第7回は、「FP2級(ファイナンシャルプランナー2級)技能検定試験:過去問紹介(学科試験)と学習方法について」としてFP2級試験の特に学科試験について具体的な事例(FP2級 過去問)も上げながらご説明していきます。また学習方法について、特に独学の場合の勉強時間についてもご説明していきます。
【シリーズ一覧】
まず、FP2級学科試験の概要についておさらいしておきましょう。
【FP2級学科試験】
FP2級:学科試験
FP6分野の知識を、横断的に問う試験です。出題形式は、四択方式の全60問です。各分野均等に出題されるため、分野ごとに10問ずつの出題です。マークシート方式。試験時間は、120分です。午前10:00~12:00
1.FP2級試験合格率
FP2級合格率(日本FP協会)
|
平成30年1月 |
平成29年9月 |
平成29年5月 |
2級学科試験 |
45.63% |
47.82% |
41.44% |
FP2級合格率(金融財政事情研究会)
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平成30年1月 |
平成29年9月 |
平成29年5月 |
2級学科試験 |
28.53% |
30.21% |
24.85% |
金融財政事情研究会の受験者の合格率は、日本FP協会の合格率と比べ、やや低い傾向にあります。ただし学科試験に関しては、試験問題は全く同じですので、受験者層のレベルの違いと言えます。いずれにしても合格ライン(60%)を突破すればどなたも受かる試験ですから、ご自身さえしっかり得点すれば、周りの受験者層のレベルを気にする必要は全くありません。
学科合格点:60点満点で36点以上
FP2級試験の概要と合格率に関しては以上となります。では今回は、このFP2級学科試験において、過去にどのような問題が出ていたのか、実際のFP2級 過去問を紹介しながら、解説していきましょう。また勉強法についても、どんな参考書やテキストを使ったほうがいいのか、さらには独学の場合の勉強時間についても解説しています。
≪FP2級技能検定試験:過去問紹介(学科試験)と学習方法について≫
1.FP2級 学科試験過去問紹介とその解説
2.FP2級 勉強法について
FP2級 学科試験過去問紹介とその解説
FP2級学科試験は、毎回60問出題されます。各分野から均等に10問づつで、出題形式は、すべて四択方式です。ほとんどの場合、適切(正しい)、不適切(誤り)を選択させる形式です。選択肢の中には、判断に迷うようなものも含まれる時がありますが、そのような場合でも、「この中では相対的にもっとも正しいのはどれか。」というスタンスで回答するようにしましょう。また空欄補充で正しい組み合わせはどれかという聞き方をされることもあります。では実際のFP2級 過去問を通し、2問ピックアップしご紹介しましょう。いずれも平成30年1月本試験からのご紹介です。
まず事例として、実際の【問題】をご提示します。その後、【解説】を記し、最後に【ワンポイントアドバイス】として、問題に対する取り組み方・考え方をご説明していきます。
事例1
【問題】
生命保険を活用した家庭のリスク管理に関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。
1.「自分が死亡した後の子どもが成人するまでの生活資金を準備するために生命保険に加入したい」という相談に対して、収入保障保険への加入を提案した。
2.「自分の老後の生活資金を準備するために生命保険に加入したい」という相談に対して、個人年金保険への加入を提案した。
3.「自分の将来の葬儀代を保険商品によって準備したい」という相談に対して、定期保険への加入を提案した。
4.「子どもの教育資金を準備するために生命保険に加入したい」という相談に対して、こども保険(学資保険)への加入を提案した。
(平成30年1月試験 問19 リスク)
【解説】
正解 3
1.○ 適切。収入保障保険とは、年金形式で死亡保険金を受け取れるもので、遺族の一定期間にわたる生活資金の準備に適している。
2.○ 適切。個人年金保険とは、原則自身の生存中に年金形式で保険金が受け取れるものであり、自身の老後資金の準備に適している。
3.× 不適切。定期保険では、ある一定期間(保険期間)しか、保険金が保障されないため、それ以降になくなる可能性も考慮すると、葬儀代の準備には適さない。終身保険の加入が適切。
4.○ 適切。子ども保険(学資保険)は、契約者(親など)が死亡した場合、以降の保険料は免除となり、かつ保険金がもらえるという機能を有しているため、子供の教育資金作りには適する。
【ワンポイントアドバイス】
リスク分野でよく出される「生命保険を活用したリスク管理」の問題。各商品の特性を理解していることが前提として求められます。ただそれさえ把握していれば、得点しやすい問題形式のため、落とさないようにしましょう。損害保険のリスク管理としても同様の出題があります。
事例2
【問題】
法人税に関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。
1.法人税法上の法人には、普通法人、公益法人等、人格のない社団等などの種類があり、それぞれの種類について納税義務の有無や課税所得等の範囲が定められている。
2.法人税における事業年度は、法令または定款等により定められた1年以内の会計期間がある場合はその期間をいう。
3.法人税の確定申告書は、原則として、各事業年度終了の日の翌日から2ヵ月以内に、納税地の所轄税務署長に提出しなければならない。
4.新たに設立された株式会社が、設立第1期から青色申告を行う場合は、設立の日から6ヵ月以内に、「青色申告承認申請書」を納税地の所轄税務署長に提出し、その承認を受けなければならない。
(平成30年1月試験 問36 タックス)
【解説】
正解 4
1.○ 適切。法人税法上の法人は、公共法人、公益法人、人格のない社団、共同組合、普通法人の5つに区分されており、区分ごとに納税義務の有無や課税所得途等の範囲を規定している。
2.○ 適切。法人税における事業年度は、法令または定款等により定められた会計期間がある場合は、その期間をいう。よってほぼすべての場合、事業年度=会計期間と考えてよい。
3.○ 適切。法人は、原則として各事業年度終了日の翌日から2ヵ月以内に、確定申告書を提出しなければならない。
4.× 不適切。新たに法人を設立し、設立第1期間から青色申告の特典を受けるためには、設立の日から3ヵ月以内に「青色申告承認申請書」を所轄税務署長に提出し、その承認を受けなければならない。
【ワンポイントアドバイス】
2級ならではの法人税の問題です。法人税法にかかる数値(年)を覚えているか、どうかが分かれ道です。ぜひ基本的な数値(年)は押さえておきましょう。
いかがでしょうか。これがFP2級 過去問の一例です。正解肢を選ぶにあたって迷う場合も、日ごろから、4つの選択肢のなかで、相対的に選ぶ練習をしておきましょう。
FP2級 勉強法について
まずFP2級試験の難易度に関してですが、3級同様、頑張ればだれもがとることのできる、やりがいのある試験であると言えます。ただしそうは言っても当然、FP6分野にわたる広範囲な学習が必要となりますし、3級に比べ、難易度もあがってきますので、より詳細に学習する必要性が出てきます。
そのようなFP2級試験についてどのように対策を立て勉強していくのが良いのでしょうか。資格学校へ通う方法、通信教育を受ける方法、まったくの独学で行う方法と様々なスタイルがありますが、ここでは特に独学を前提とした勉強方法について述べていきます。
1、FP2級独学における基本的スタンス
完全に独学となると、自分だけが頼りとなります。まず大前提として必ずやり抜くという気持ちを持つことが重要です。FP試験の出題範囲は6分野にわたりかなり広範囲です。各分野に専門士業の試験があるくらいで、それを横断的に学習する必要があります。
もちろん3級にくらべ、難易度は上がりますが、かといって非常に細かい論点を追うのではなく、よく出る定番問題や重要論点に絞ってマスターする姿勢が肝要です。ぜひこのスタンスは守り抜いてほしいと思います。3級同様、決して満点を取らなければいけない試験ではないのです。6割の得点で合格できるのです。
2、FP2級独学におけるテキスト・参考書選び
3級と同様ですが、まず独学で大切なのは、テキスト・参考書選びです。むしろこれがすべてと言っても過言ではありません。
やはり自分自身にあったものを選ぶことです。実際に本屋に行って書棚に並んでいる様々なテキスト・参考書を手に取ってこれだ!と思えるものをチョイスすることをお勧めします。この時大切なのは、決して一番売れているものが自分にとっても一番良いとは限らないのです。またカラフル過ぎるのも考え物かと思います。というのも勉強にあたり、多くの方が自分でアンダーラインを引きたいと思ますが、カラフル過ぎては、そのアンダーラインが目立たず自分のやった足跡が残しにくくなります。落ち着いて学習できる自分に合ったものを選びましょう。
3、FP2級独学における勉強時間
学習時間についてですが、これは人により千差万別でなんとも言えないというのが正直なところです。
金融や不動産など今までの業務経験の有無も多少は影響しますし、さらには宅建や証券外務員、税理士、社労士などFPに関連する分野の資格をもっている方であれば、大きなアドバンテージがあるからです。もちろんFP3級試験の受験の有無や合否など、それまで培ってきたFP学習のベースの濃淡もあるでしょう。
ただ独学する場合の一般的な勉強時間は、どうかというと、あくまで目安ですが、少なくとも100時間以上は必要かと思います。一つの科目のインプットを15時間としても15×6=90時間です。それに問題演習や過去問解きの時間も加えなければいけません。それを合計10時間としても100時間なのです。実際にはもっと多くかかるはずです。
120時間とした場合で考えてみます。一日1時間で月20日学習するとなると20時間です。120時間÷20時間=約6カ月が必要となります。よくFP2級の準備期間は、半年程度と言われることが多いのはこのためです。もちろん短期集中的に時間を確保できる方はこの限りでありません。
以上は比較的スムーズにいく場合の目安にすぎません。ご自身が納得するまで、習熟するまで時間がかかるかたは、200時間、300時間とやっていただいて構わないのです。悔いのないよう思いっきり頑張ってください。
あと念のため、受験資格ですが、FP3級合格の資格でも受験はできますが、FP2級技能士合格後、日本FP協会のAFP資格に登録したい場合は、FP協会の認定研修を受講し、終了することが必要となりますので、どうぞお忘れなく。
FP2級の学科試験編は以上となります。次回はFP2級実技試験(資産設計提案業務)について、実際のFP2級 過去問も見ながら解説していきます。どうぞお楽しみに。
【シリーズ一覧】
【執筆協力】
■所属
近藤FP事務所 代表 (有)徳友舎 代表取締役
■保有資格
・CFP
・1級FP技能士
・宅建取引士、
・相続アドバイザー協議会(R)上級アドバイザー
■所属・加入団体・等
2009年 資格の学校TAC FP講座講師
2016年 一般社団法人「理想の住まいと資金計画支援機構」千葉支部長
2017年 日本FP協会「2017年度くらしとお金の相談室」相談員