皆様こんにちは。ファイナンシャルプランナーの近藤喜隆です。「FP試験対策シリーズ」第5回は、「FP3級(ファイナンシャルプランナー3級)技能検定試験:過去問紹介(実技試験)と学習方法について」としてFP3級試験の特に実技試験について具体的な事例(FP3級 過去問)も上げながらご説明していきます。また学習方法についても合わせてご説明していきます。
まず、FP3級実技試験の概要についておさらいしておきましょう。
試験概要(実技)
実技試験というと、何か体を動かしたり、面接を受けたりといったイメージを持たれるかもしれません。しかしそんなことは全くなく、ごく普通のペーパーテストですのでご安心ください。なぜ実技と呼ぶかというと、多くの問題がFP実務であるコンサルティングを想定した事例で構成されているから、こう呼んでいるだけなのです。
日本FP協会と金融財政事情研究会とで問題が異なりますのでご注意ください。
・日本FP協会:「資産設計提案業務」 20問程度の三択方式です。FP6分野から出題されますが、出題量には偏りがあり、ライフに重点が置かれています。キャッシュフロー表やバランスシートといった定番問題が出ます。
・金融財政事情研究会:「個人資産相談業務」 リスクを除く全5分野の事例形式が計15問程度出題されます。こちらは各分野均等に3問づつです。その他、「保険顧客資産相談業務」試験があります。
協会、金財いずれも試験時間は60分です。午後13:30~14:30の1時間で途中退出は出来ません。
試験合格率(実技)
FP3級実技試験合格率(日本FP協会)
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平成30年1月 |
平成29年9月 |
平成29年5月 |
3級実技試験 |
86.18% |
85.37% |
86.18% |
FP3級実技試験合格率(金融財政事情研究会)
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平成30年1月 |
平成29年9月 |
平成29年5月 |
3級実技試験 |
67.13% |
75.83% |
59.69% |
金融財政事情研究会の受験者の合格率は、日本FP協会の合格率と比べ、やや低い傾向にあります。実技試験に関しては問題に違いがありますが、同一内容の学科試験にも同じ傾向がみられるため、受験者層のレベルの違いとも言えます。なお金財の合格率は、「個人資産相談業務」試験の結果です。合格ライン(60%)を突破すれば受かる試験ですから、ご自身さえしっかり得点すれば、周りの受験者層のレベルを気にする必要は全くありません。
合格点
・実技合格点(日本FP協会):100点満点で60点以上
・実技合格点(金融財政事情研究会):50点満点で30点以上
また配点に関しては、以下の通りです。
・資産設計提案業務(日本FP協会):各5点×20問=100点
・個人資産相談業務(金融財政事情研究会):各問3点~4点の配点です。計15問で合計50点となるように配点されています。模範解答とともに毎回公表されます。
FP3級実技試験の概要に関しては以上となります。では今回は、このFP3級実技試験において、過去にどのような問題が出ていたのか、実際のFP3級 過去問を紹介しながら、解説していきましょう。ここでは日本FP協会の資産設計提案業務について取り上げていきます。
FP3級 実技試験過去問紹介とその解説(資料:FP協会)
FP3級実技試験資産設計提案業務は、20問程度の三択方式です。実際の試験内容を2問ピックアップしご紹介しましょう。いずれも最新の平成30年1月本試験からのご紹介です。
まず事例として、実際の【問題】をご提示します。その後、【解説】を記し、最後に【ワンポイントアドバイス】として、問題に対する取り組み方・考え方をご説明していきます。
事例1
【問題】キャッシュフロー表の穴埋め問題
(平成30年1月試験 問2 ライフ)
【解答】 3
【解説】
(ア)4年後の基本生活費を求めるには、以下の式で計算する。変動率2%とあるので、毎年2%づつ金額が増えていくことに留意する。
○年後の予想額(将来価値)=現在の金額×(1+変動率)経過年数
238万円×(1+0.02)4=238×1.0824・・=257.61・・ →258万円 (万円未満四捨五入)
(イ)1年後の金融資産残高を求めるには、以下の式で計算する。変動率が1%であるので、基準年の残高が1%増えることに留意する。
貯蓄残高=前年の貯蓄残高×(1+運用利率)±その年の年間収支
1,068万円×(1+0.01)-766=312.68 →313万円 (万円未満四捨五入)
以上を満たす選択肢は、3となる。
【ワンポイントアドバイス】
必ず出るキャッシュフロー表の問題です。上記の2式は必ずマスターしておきましょう。(ア)に関しては、計算機のたたき方も、ご自身が学習されるテキスト等で確認しておくのがお勧めです。
事例2
【問題】建築基準法容積率の計算
(平成30年1月試験 問5 不動産)
【解答】 2
【解説】
延べ面積の最高限度は容積率を用いて計算するが、設例のように、前面道路の幅員が12m未満の場合は次の1)2)のうち小さいほうが限度となる。
1)都市計画により定められた容積率(指定容積率)
2)前面道路の幅員×法定乗数
1)400%
2)6m×6/10=360% < 1)400% したがって、360%を適用する。
延べ面積の最高限度=300×6×6/10=1,080(㎡)
【ワンポイントアドバイス】
容積率に関する典型的な問題です。建ぺい率の数値も列記されていますが、延べ面積といわれたら、容積率となります。惑わされないようにしましょう。さらに3級と言えども、前面道路が狭い場合は法定乗数を用いた計算も行う必要があることを知っておく必要があります。
いかがでしょうか。これが3級の資産設計提案業務の典型的な問題パターンです。このような試験内容に、ぜひ慣れておいてください。金財の個人資産提案業務試験に関しても、定番問題がよく出されますので、受験する方はしっかり確認しておきましょう。
日本FP協会ホームページ https://www.jafp.or.jp/exam/
金融財政事情研究会ホームページ http://www.kinzai.or.jp/ginou/fp/3kyu/index.html
FP3級 勉強法について(実技試験編)
FP3級試験の難易度に関して決して難しいレベルではなく、頑張れば誰もが合格できるやりがいのある試験です。実技試験に関しても同じことが言えます。
ただ実技試験に関しては、パターン化された定番問題が多いのが特徴です。ですから勉強法としては、学科試験以上に過去問題演習をしっかり行い、解法を身に着けておくという対策が重要となります。また試験時間が学科に比べ、1時間(13:30~14:30)と少ないことが言えます。すると時間内にしっかり解答を終えるというスピード感も養っておくことが大切なのです。3級実技試験に関しては、各問の配点が公表されますので、試験実施団体のホームページで確認しておくとよいでしょう。
勉強法としては、学科試験向けの知識の定着が基本となりますが、それができたらあとは問題演習あるのみです。試験内容をしっかり確認の上、皆さんがえらんだテキストや問題集で対策を積んでください。間違えた問題を繰り返し解くことで、合格点を十分とることができるようになります。ぜひ頑張ってください。
これで3級試験編は終了です。皆様の3級試験合格をお祈りしております。
【執筆協力】
■所属
近藤FP事務所 代表 (有)徳友舎 代表取締役
■保有資格
・CFP
・1級FP技能士
・宅建取引士、
・相続アドバイザー協議会(R)上級アドバイザー
■所属・加入団体・等
2009年 資格の学校TAC FP講座講師
2016年 一般社団法人「理想の住まいと資金計画支援機構」千葉支部長
2017年 日本FP協会「2017年度くらしとお金の相談室」相談員