相続対策の切り札として校正証書遺言は古くからあるのは周知のことですが、実は相続の現場では全くの無用の長物と化されています。
確かに相続人の争い防止にはいいのですが、それはあくまでも不動産登記だけに有効なものです。
銀行における預貯金の相続の名義変更には全く使うことができないのです。
それはもう相続実務家の常識ですが、なぜか世間ではまったくといっていいほど知れ渡っていません。
相続になったときにはじめてその銀行からの対応に出くわします。
相続人「公正証書遺言書がありますのでこの預金の名義を相続人の私にしてください・・・」
銀行窓口「はい、それはそれとして、当行所定のこの書類に相続人全員の署名と実印そして印鑑証明を出してください」
相続人「公正証書遺言書ではだめですか?」
銀行窓口「はい、当行としましてはこの書類が必要となります・・・・。」
さあ 大変ですね。
そんなやりとりが銀行の窓口では密かに?静かに10年以上前からずっとありました。
公正証書遺言が銀行から舐めに舐められて完全にノックアウトにされた文書が法曹界の専門誌「判例タイムズ」2005年版で特集されていますが、これも世間の目にとまることはなかったようです。
その文書とは次のものです。
日本公証人連合会から全国銀行協会宛の
「公正証書遺言に基づく預金の払戻し等についての要望」について
文書の論点を抜粋するとざっと次のようになります。
日本公証人連合会の主張は、公正証書遺言で指定された遺言執行者からの預金払戻しの請求に対し、依然として共同相続人全員の同意書等の提出を求める銀行があり改善してほしいと嘆願?しています。
1.公正証書遺言は、自筆証書遺言と異なり、信頼性が格段と高い。
2.遺言執行者は民法1012条、1013条、1015条で定める権限を有する。
3.共同相続人全員の同意書等を提出しなければ払戻しを拒絶するのは違法といわざるをえない。
4.遺言執行者からの払戻請求に応じた後、万一、遺言の取消しとか、遺言無効の判決があったとしても、銀行は債権の準占有者への弁済として免責される。
それに対しての銀行協会からの回答は凄い内容です。(続く・・・)