2015年8月に中国経済メディア財新と調査会社マークイットが同日発表した8月の中国製造業購買担当者景気指数(PMI)速報値は47.1との低水準となり、大幅な景気減速の可能性を予測され、その水準の回復を見せることなく12月にはPMIが48.2と発表されて、一斉売り出しが開始されました。PMIは50を目安に好不況に分けるのですが、PMI50を10ヶ月連続下回りました。その低迷は今年に入っても続き、2016年1月4日、新年の取引開始と同時に上海株式市場は下落し始め、午前中にPMIが発表されると、株価は加速度を増して下落しました。その内訳は生産指数、雇用指数、新規輸出受注などで、全て穏やかな減速を示しました。その為、代表的な指数であるCSI300(上海深セン総合指数)が7%下落し、株価全体が一定以上値下がりすると市場全てが売買停止するサーキットブレーカーを発動しました。その際、5%変動で15分間停止し、7%変動でその日の取引を全面停止しました。このように波乱のスタートを切ったものの、強化政策や金融緩和制政策により、供給面と需給面での回復が徐々に見られ、10月にはPMI50を上回るようになり、回復の予兆が見えてきました。その背景には、大幅なリスク回避をする為にとった策として、工業生産の底入れの動きにみられます。その中でも大きな割合を見せるのは、住宅販売の拡大にあると考えられます。
中国経済の減速懸念に伴い住宅価格の低迷したことから、2014年頃から地方政府は独自の住宅ローン規制緩和を行い、2015年3月30日に中国人民銀行、住房城郷建設部、中国銀行業監督管理委員会の3つの部門が個人住宅ローン政策として、個人の住宅ローンの規制緩和を公表し、2軒目の購入でローンの頭金比率を6~7割から4割に引き下げる政策を打ち出しました。全国的に住宅ローンの規制緩和政策を導入したと同時に、財政部国家税務総局より住宅売却にかかる営業税の課税条件が大幅に緩和されたことにより、住宅を持ち、ローンを完済していない方でも(購入住宅の頭金を支払っていれば)2軒目も購入しやすくなり、初めて住宅購入する方も、公的ローン(住宅積立金)を利用する場合、住宅価格の20%以上の頭金で組むことが可能となりました。その事が引き金となり住宅販売、転売取引が加速し、それに伴い人気エリアを中心に不動産価格上昇が始まり、未だ、中国不動産価格は上昇し続けています。
2017年に入り、中国経済回復はそのまま順調に安定の方へ進むかというと危ういかと思います。そのうえ、順調に回復が続くとしてもこれまでの様に急成長していた頃のような不動産需要は今後見込めないでしょう。中国は今や米国に次ぐ世界第2位の市場規模となり、特に、不動産市場への投資を軸に高度経済成長遂げてきたため、中国経済の減速はグローバル不動産市場の大きな不安要素となります。日本の不動産市場へは直接的にマイナス要因になるような影響はあまり考えられないとは思われますが、中国経済の不安定さは世界経済全体に不安要素をもたらすことは間違いないでしょう。