平成バブル期には、有り余る資金を投入して、多種多様なマンションが作られた。

5万棟のマンションカタログを所有するSD建築企画研究所(東京)清水修司代表のコレクションの中から、バブルマンションを紹介する。今回は一風変わったカタログを制作して売り出されたサンマンション北本を取り上げる。

 (リビンマガジンBiz編集部)


異様にこだわったレコード風マンションカタログ

好みのレコードを選ぶように、マンションを買ってみたい―

そんな気分で企画されたのだろうか、サンマンション北本のカタログはレコードジャケットをイメージして創られている。

マンション名:サンマンション北本

竣工:1990年2月

場所:埼玉県北本市東間

最寄り駅:JR高崎線  北本駅 徒歩18分 

湘南新宿ライン高海駅  北本駅 徒歩18分

建物:地上6階、地下1階、

総戸数:230戸(他茶室1戸)

「帯」まで付いている

サンマンション北本のマンションカタログ表紙(清水修司氏提供)

レコード風のマンションカタログは、2つ折りになっており、中には間取り図や料金表などの詳細が折り込まれている。ご丁寧なことに、当時のアナログ盤につけられていた「帯」まで用意されている。(レコードコレクターにとって「帯」はとても重要なものだが、撮影資料では残念ながら破損している)

内側には収録曲(?)の歌詞に模したマンションポエム。何か元ネタがあるのだろうか?

歌詞に何か意味があるのか

デザインに注目したい。まず全体の基調とする色彩。ティファニーブルーを彷彿とさせる青緑でいかにも80年代っぽい。(竣工は90年だが、制作時期は89年頃と思われる)

表紙(カバー)の写真も面白い。外国人のカップルが自然の中で自転車に二人乗りする。陽光に包まれている二人は楽しげだが、はしゃぎすぎている感じもしない。この雰囲気は当時流行っていた音楽ジャンル「ネオアコ」のジャケット写真にも多く見られた。

そして驚くのが、ジャケットには物件の外観などが全くないことだ。シールのように「サンマンション北本」と文字があるだけ。

どこかで見たような…?

レコードジャケット風というよりは、レコードジャケットに限りなく近づけようという、制作者の意欲が感じられるデザインになっている。

「建物の仕様は当時の郊外型マンションとしては普通かな。何か目立たせようと思って、工夫したのがレコード型のカタログだったのかも」(SD建築企画研究所・清水修司代表)

郊外に多いタイプのマンション外観

販促予算をカタログのデザインに投資したと予想する。

最寄り駅まで徒歩18分。駅から都心まで1時間以上かかる立地のため、差別化のためにも自然あふれる郊外の暮らしを演出するため、やけに気合いが入った珍品カタログと言えよう。

資料もレコード

最寄り駅の時刻表

生活雑貨店の商品カタログも盛り込まれている

※取材協力
清水 修司(しみず しゅうじ)
SD建築企画研究所 代表
 
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