道路整備や防災事業絡みで、お役所から人が来て「お宅の山林を売ってほしい」と言われたとします。売ることにしたものの、「価格がいくらくらいなら適正なの?」という疑問があるかもしれません。今回は、こうしたケースで参考となる情報をご紹介します。
1.土地の価格を決める方法は三つ
土地の価格を決める方法は、不動産を公正かつ客観的に鑑定するために定められた基準である、「不動産の鑑定評価等」によれば、次の三つとなります。
・原価法
・事例比較法
・収益還元法
1-1.原価法
その土地を、再度取得するための費用を元に、価格を決める方法です。原価が把握しやすい宅地造成による土地、埋め立て地の土地などで用いることができます。
1-2.取引事例比較法
場所が類似し、売買がよく行われる地域の取引成立事例の価格を元に、対象となる土地の価格を決める方法です。取引成立事例の価格に、場所や時間の相違に関する修正を加え、調整することで、土地の価格を算出します。
1-3.収益還元法
主に繁華街や、オフィスの集まる商業地区の土地価格の調査で用いられます。その土地を利用することで、将来生み出される収益をもとに、その収益を利回りで割り戻すことで、土地の価格を算出します。
お役所の算出する「買い取り希望価格」は、実務で最もよく用いられる、取引事例比較法による土地価格となることが多いです。しかし、売買事例が少ない場合には、その他の方法で算出した土地価格を、「買い取り希望価格」とすることがあります。
2.鑑定評価が必要になるケース
登記簿上で、「山林」や「原野」といった区分に表題欄に記載されている土地は、「宅地」や「農地」と比べて、売買件数が少なく、売買事例も少ないのが普通です。こうした土地では、第三者の客観的な視点で、「公正な鑑定」を受ける必要が出てきます。
今回の、お役所に「お宅の山林を売ってほしい」と言われたケースは、こうした鑑定評価が必要になるケースに該当することが多く、鑑定評価に必要な調査、およびその調査に必要な費用は、お役所が負担することになります。鑑定評価はお役所から委任された、「不動産鑑定士」という公的な資格を持った専門家によって実施されます。
3.お役所に売ることで受けるメリット
お役所に不動産を売ることで受けるメリットとして、次の二つがあります。
・譲渡所得の特別控除
・補償金等で他の土地建物に買い替えた場合の特例
両方のメリットを同時に受けられるのではなく、いずれかを選択することになります。
3-1.譲渡所得の特別控除
居住用の住宅の場合、3,000万円を上限とした所得控除が受けられますが、公共事業に関係した不動産の売却に伴う譲渡所得に関しては、さらに2,000万円の所得控除が認められ、合計で5,000万円を上限とした所得控除が受けられます
3-2.補償金等で他の土地建物に買い替えた場合の特例
この特例を受けると、「現不動産を売った金額より新しく買い替えた金額の方が多い」とき、所得税の課税が将来に繰り延べとなり、売った年については「譲渡所得はなかった」とされます。
4.まとめ
今回は山林が道路整備や、防災事業の用地取得に関係するケースについてご紹介しました。公共事業に協力する形の土地等の売却は、税制上の優遇措置が受けられて、なおかつ「社会の役に立てた」という、自負が得られるメリットがあります。土地以外にも、都市開発事業などで自宅が関係し、移転や移築が求められるケースも、このような税制上の優遇を受けられます。