オンライン重説、金融引き締め、空き家の増加など、2017年は不動産業界にとって大きなトピックスが目白押しだった。では、2018年不動産界はどうなっていくのだろうか。不動産鑑定士で、不動産投資についての著作もある浅井佐知子さんに、2018年の不動産業界を予想してもらった。(リビンマガジン Biz編集部)
(画像=写真AC)
2018年の幕が開きました。年初は恒例の不動産市場動向についての予測をしたいと思います。
最初に2017年を振り返ってみます。昨年は以下のように予測しました。
・不動産市場は昨年同様、実需は横ばい
・投資物件は好調・利回りが低くなりづらいが、引き続き物件不足の状況が続く
・実需の中古マンション市場は、良い物件は好調でも、駅から遠いものや、古い物件はやや弱含み
大方当たっていたように感じますが、いかがでしょうか。
実需の中古マンションの価格は予測した以上に勢いがありました。
次に昨年2017年の経済を簡単におさらいします。
・株高、25年ぶりの高値を更新
・ドル円は110円~115円の間で比較的落ち着いていた
・低金利継続
・仮想通貨の台頭と価格上昇
株の上昇はすごかったですね。
また、ビットコインを中心とした仮想通貨の上昇にはついていけないものもありました。それに伴い、家電量販店や一部の不動産会社では、仮想通貨での支払いができるようになりました。まさに仮想通貨元年の年でした。
2018年はさらにいろいろな分野で使用可能になるかもしれません。近い将来は、仮想通貨で物を買うのが当然の世の中になでしょう。小銭を持ち歩かない世界は、意外と便利かもしれませんね。
以上のことを踏まえた上で、2018年の不動産市場を予測したいと思います。
不動産業界は様々なプレイヤーがいて、それぞれが外部要因の影響を受けながら動きます。そして、それらが相互に影響しあい不動産の価格が決まっていきます。
今回は、以下の人たちの動向を予想したいと思います。
1.REIT関連
2.生保などの機関投資家
3.外人機関投資家
4.自宅を購入する一般の人
5.相続税対策の地主
6.一般投資家
■REIT関連および生保などの機関投資家
不動産取引市場は2兆円前後の規模で推移しています。その主力プレイヤーはREITで、取引金額の約4割を占めています。
近年REITに組み込まれる大型の優良物件が減っており、期待利回りは過去最低の3.5%となっています。2018年もこの動きは変わりませんが、過熱感は落ち着くものとみられ、期待利回りは今の水準を維持するのではないかと思います。
生保などの機関投資家の動きも、基本的にはREITと同じです。
■外国人機関投資家
世界的な金融緩和、金余り状況から外国人機関投資家の日本への資金流入も引き続き活発だと思われます。
■自宅を購入する一般の人
中古マンションの価格が上昇しています。しかし、低金利が今年も続くとみられ、引き続き好調だと考えられます。戸建住宅は駅から近い、都心から近いなどの利便性の高い物件やブランドもの(三井、野村など)は好調でしょう。
それ以外の戸建は供給過剰感があり、場合によっては価格をダウンしても決まらない物件も出てくるかもしれません。世の中が「利便性」を以前よりも重視し始めているため、戸建を売って、駅前のマンションに移り住む人が増える傾向は今後も続きます。従って、利便性の劣る地域の戸建住宅は次第に価格が下がっていくと思われます。
■相続対策の地主
相続税対策の地主は2018年も大型の不動産を買い続けます。相続税が上がったことから、投資用不動産での相続対策が不可欠だからです。
都銀を始め大手銀行は、金融庁の「金融レポート」の影響で、一般投資家への貸し出しを控え始めました。その代わりとして、以前よりも更に積極的に相続税対策の地主に融資をする傾向にあります。地主は金利1%を切る好条件で借りることができるため、利回りが低くても引き続き投資意欲は強いと思われます。
ちなみに、相続税対策の地主さんの購入価格帯は3億~10億です。この価格帯の物件を購入できる層は少ないため、かなりの指値を効かせて買っているようです。
■一般投資家
一般投資家に関しては、2018年は去年よりも融資条件が悪くなることが考えられます。金利の上昇や、共同担保を求められるケース、頭金の額が増えることもあり得ます。
ただし、金融機関の貸し出しに関する積極的な姿勢は変わりません。ある銀行が貸し出しを絞っても、違う銀行が貸してくれることもあります。
一般投資家は、昨年より返済比率に注意を支払う必要があります。利回りが低いのであれば、頭金を出してでも返済比率は50%以内にする必要があります。無理なローンを組まないということです。もしくは利回りの高い物件、イールドギャップのある物件を選ばなければなりません。
気を付けることは無理やり利回りを高くしている不動産を選んではいけないことです。
・一部屋が小さい1K
・シェアハウス
・限界集落に存している(賃貸ニーズがない)物件
このような物件は見せかけの利回りが高くしています。
また、悪徳不動産会社のいくつかは、今年倒産する可能性が高いです。
「相場よりも高い賃料のサブリース付で購入したけれど、サブリース会社がつぶれる」ケースも出てくると思います。
■2018年の賃料はどうなる?
最後に賃料を予想してみます。2018年の賃料は基本的には据え置きだと思います。しかし、昨年たくさんの新築物件が建っており、場所によっては供給過剰で値下がりするところも出てくると思います。物件を購入する場合は、必ずその地域周辺の市場調査を行う必要があるのは言うまでもありません。
以上、各プレイヤーの2018年の動きを踏まえて、不動産価格は以下のように動くと予測します。
1.大型ビル 横ばい
2.新築マンション 横ばい~弱含み(割高感、供給過剰)
3.中古マンション 横ばい
4.投資用の1棟マンション、アパート 横ばい~弱含み(融資条件の悪化)
5.投資用区分マンション 横ばい~弱含み
6.賃料 横ばい
2018年は不動産価格、取引数、賃料など、昨年と比べて大きな変化はありません。しかし好調になるということもないと思います。現状維持、もしくはやや弱含みの1年になるでしょう。
来年の今頃、「ね、当たっていたでしょ~」と言えると嬉しいなあ。