賃貸住宅退去時の敷金返金を巡ってトラブルが起こることが多々あります。
賃貸住宅の敷金返金や原状回復を巡るトラブルは国民生活センターに年間1万件を超える数が寄せられています。
その内容の多くは、高額なクロス(壁紙)の貼替費用などを請求する不動産業者や家主に対してのもののようです。
敷金返還の原則は、クロスに限らず通常の使用による傷や汚れなどの修繕費用は月々の家賃に含まれているとされ、敷金から差し引かれることはないとされています。
この原則を知らずに不動産業者や家主の請求に応じ負担義務のない修繕費用を支払ってしまい泣き寝入りする入居者が後をたちません。
では、この原則に当てはまる通常使用によるキズや汚れとはどの程度のものとなるのでしょうか
国土交通省のガイドラインは次のようなものとなっています。
家主の負担
① クロス
・日差しなどによる変色
・ポスターや画鋲などの跡
・冷蔵庫やテレビなどの後ろの黒ずみ
② 床
・家具によるカーペットなどのへこみ
・破損のない畳の裏返しや表替え
・フローリングのワックスがけ
③ 設備
・台所、トイレなどの消毒
・浴槽の取り換え
④ その他
・ハウスクリーニング
・鍵の取り換え(紛失のない場合)
入居者の負担
① クロス
・手入れをしていない油汚れ
・子供のした落書き
② 床
・こぼして汚した飲み物のシミやカビ
・キャスター付きの椅子がつけたフローリングの傷
③ 設備
・浴室・トイレ等に発生したカビ
・ガスコンロ周り、換気扇の油汚れ
④ その他
・ペットがつけた傷やにおい
ざっと、このような分類となっています。
捕捉しますと、入居者の落ち度がある汚れであっても、貼替費用の一部は家主が負担しなければならないとされています。
内装は通常の使用と日差しなどによる経年劣化でその価値は年々下がっていくものですが、これは、いわゆる減価償却であり、ガイドラインではクロスやカーペットなどは張り替えてから6年でその価値はゼロになるといわれています。
この減価償却部分は入居者に責任がないとされており、入居者が負担するのは過失にって減価償却うぃ超えて余計に価値を下げた部分となってきます。
以上のことから、クロスの貼替費用を100%入居者負担として敷金からさしひくのはルール違反といえるでしょう。
一昔前は、一般的に普及されていた考え方ではなかったのですが、東京でこの問題が沸き上がり、東京においては東京ルールと称され通常使用範囲の考え方が導入されておりました。
この東京ルールが一つの指針となり、通常使用範囲の考え方がガイドラインとなってきました。
不動産取引においては、法的根拠に基づかない慣例で推し進めてしまうことがあります。
土壌汚染、境界問題、などなど、慣例でこうあるべしの前に、そもそもの法的根拠や本当に必要とするものなのかで判断するべきでしょう。