昨年の貸家着工戸数は8年ぶりの高水準となる42万戸を少し下回る数字でした。
これは、言わずとしれた2年前の相続税の計算で使う基礎控除額の減額改正が原因となるものです。
基礎控除額が減額されたことを追い風に相続税の減額対策として貸家を建てましょう、建てましょう、と建築会社や不動産会社等が、こぞって営業攻勢をかけたからに他ありません。
また、昨年の新設住宅着工戸数は前年比6.4%増の97万戸を少し下まわる数字となりました。
従来より、景気の動向を図るうえでの新設住宅着工戸数は、100万戸が目安とされていました。
100万戸を達成すれば景気は悪くないといった考え方が今も脈々と受け継がれているようです。
近年、騒がれている空き家の増加は増えていくばかりです。
それもそのはず、人口は減っていくのに、住宅の着工戸数は右上がりの増加となっています。
ちなみに、昨年の新設住宅着工戸数は前述したとおりに97万戸弱で前年比6.4%増加、2年連続の増加となっています。
その現象を起こしている原因となるもののの一つが相続税対策のための前述した貸家建築の着工数です。
08年の貸家住宅着工戸数は30万戸前後であったものの13年には35万戸を回復し16年には40万個を突破することとなりました。
とにもかくにも、貸家を建築すれば貸家建付地として約20%の評価減と貸家建築資金と貸家の建物の相続税評価額(固定資産税評価額)の乖離部分として建築資金の約60%の評価減が見込めることから、相続税を下げられます、相続税対策、ですといった節税による販売攻勢とさらには30年一括借上です、といった安定収入が見込めるようなセールストークでの賜物として貸家の建築が増大したわけです。
節税効果は確かに得られるものの、問題は、安定経営です。
需要に対して供給過剰であるにも関わらず、建築会社も銀行も先行きの空室リスクには目をつむり目先の業績に囚われて新設着工が続いています。
その結果、神奈川県や千葉県では木造貸家の空室率が35%を超えている状況が産まれてきました。
少ないパイを貸家の大家が奪い合っている状況とあいなっています。
駅近の貸家等の条件に恵まれた物件が、何とか経営を保てるような状況でしょう。
こうなると、築10年、15年を超えた貸家のなかから、貸家ローンの返済が滞ってしまう物件が相次いでくるやもしれません。
サブプライムローンならぬ相続対策アパートローンが不良債権化という事態を招くやもしれません。
まだ、貸家の建っている敷地に充分な担保評価が見込まれるのであれば、不良債権とならずとも、その敷地に充分な担保評価の見込めないとときは、一気に不良債権としてバブル崩壊のきっかけとなるやもしれません。
税金対策よりは安定経営、貸家建築はあくまでも事業であることはお忘れなきように・・・