先般、タワ―マンションの相続税評価額の計算法の改正についてお話させていただきました。
タワーマンションの建物評価額の計算上、現状では、固定資産税評価額におしのべて×1.0の倍率で計算しておりますが、その改正ではその倍率の設定を時価に準じて階数ごとに変えていくであろうことをお話させていただいたわけです。
前回は、タワーマンションの土地の相続税評価額には触れずしまいでおりました。
マンションのような土地を所有者で共有で所有している場合、お部屋ごとの区分所有面積の割合ごとに敷地権を設定して、その共有持分の割合で按分計算して求めることとなります。
つまり、路線価をもとに敷地全体の相続税評価額を、そのお部屋ごとの共有持分割合で按分計算し、そのお部屋ごとの相続税評価額を計算することとします。
このように考えると、それこそ、土地の評価額はタワーマンションの階数に関係なく、その売価に関係のない均一した区分所有面積での按分計算によっていることとなります。
建物の原価計算の観点から考えた場合、上層階に行けばいくほど、エレベーター工事費やインフラ設備等の工事代の負担は大きくなってくるという考えがあります。
多少は、上層階に行けばいくほど、確かにコスト増にはなっているでしょう。
この上層階に行けば行くほどにコスト増となっているところを、今回の税制改正における固定資産税評価額の見直しで是正しようとしているのかもしれません。
そして、土地の原価を階数別に時価に応じて変えていく考えは難しいでしょう。
価格が高い上層階が、特別、土地の取得費が高くなるという合理的な考えは難しそうです。
そのように考えると、タワーマンションは上層階に行けばいくほど、利益は高いということでしょう。
その利益部分は、いわゆる眺望権という付加価値によって生まれていると考えられます。
この眺望権というプレミアムで価格は高くとも売れるということでしょう。
そこで、今回のタワ―マンションの相続税の建物評価額の改正として予定されていると言われる階数ごとの倍率の設定・・・
この設定によって、もしかすると原価により近づく評価額、もしくは原価を超えるという評価額がでてくるものや否や、が気にはなってきます。
ただし、相続税の評価は、あくまでも相続開始時の時価ですから、時価から算定基準を定めていくことは問題なく、極論、原価配分額を超えてしまってもそれはそれで仕方ないことでしょう。
ただ、そこには眺望権が含まれることとなり、この眺望権の価値は建物か土地であるのか?
私の考えでは眺望権は建物のみの価値にあらず、土地にもその価値はあるものとして考えることが合理的であると考えます。
土地の相続税評価額は路線価で一体で計算した金額を建物の専有面積割合で按分して求めますので、タワーマンション上層階の所有者にとって有利な方向で計算されることとなり、タワーマンション上層階の所有者から見れば土地についても相続税の評価額は実勢相場と比べれば割安なものとなってきます。
そして、タワーマンションの相続税の評価額の計算で、実勢相場に近づけるために、建物の固定資産税評価額に一定の倍率を乗じるよとした場合、その倍率で、どこまで実勢相場に近づけるものなのか・・・?
その倍率によっては、建物の相続税評価額が、限りなく建築コストに近いものか、もしかしたら超えてしまうケースが起こりえないでしょうか・・・?
まさに、その一般的に算定された固定資産税評価額に乗じる相続税評価額算定のための一定の倍率そのものが眺望権といえるものなのかもしれません。
眺望権を相続税の評価額に含んでいくことで、現状の実勢相場と相続税の評価額の乖離が解消されるということなのかもしれません・
このように考えた場合のこの眺望権は、土地に付随するものなのか、建物に付随するものなのか・・・?
タワーマンションの相続税の評価額の計算上では、建物の固定資産税評価額に一定の係数計算における倍率を乗じて、眺望権部分を調整する他は、なさそうです。
そうした場合、タワーマンションの実勢相場と相続税評価額の乖離を少なくすることは、合理的かつ適正なことと理解できますが、居住用や事業用(貸付等の準事業を含みます)の土地には、相続税法上に小規模宅地等の課税価格計算の特例(以下、小規模宅地等の特例と呼びます)があり、この取り扱いを一考する必要があるように思われます
それは、この眺望権の一部を、すなわちこの眺望権のプレミアムな価値を建物のみに負担させるのではなく、土地にも眺望権の価値が付随しているものとして、小規模宅地等の特例の適用を及ぶようにしないと、逆に、上層階と下層階との間の課税の不公平性が生ずるのではと感じてしまいます。
上層階にいけばいくほど、眺望権というプレミアムは高いものとなるからです。
建物には、基本、課税の特例がありませんので、タワーマンションの相続税評価額をより時価に近づけていく改正を施行するのであれば、せめて、小規模宅地等の特例のうち、居住用だけでも、眺望権の一部をその対象とすることが、よりよい課税の公平、適正化につながるのではないでしょうか?
そのように感じています。
なお、この記事はあくまでも私見の独り言として参考程度にして頂ければ幸いです。