人材のプロ青柳功「不動産キャリアの達人」
不動産業界の人材育成・人材教育をてがける青柳功さんに、不動産業界のキャリアアップや評価、必要スキルについて紹介してもらいます。
今回は、不動産・住宅業界に従事する方の人事が、どういったことを評価の物差しにしているかについてご紹介いただきました。(リビンマガジンBiz編集部)
(画像=写真AC)
■本日の3ポイント
・人事評価の方法にいくつかの種類がある
・管理職に求められているのは、部下の育成・指導能力
・自分自身の成果に、自負を持つことが重要
ここでは、「人事評価制度がある会社」という前提で話を進めていきます。
当然ながら、人事評価は企業によって重視するポイントが異なります。また、職種や職位、階層によっても異なることが前提です。
本稿では、一般的な物差しになっている2つの評価基準をご紹介します。
■定量評価制度(MBO)
1つ目は、MBO(Management by Objectives:目標管理制度)です。
これは、個人またはグルーブごとに目標を設定し、それに対する達成度合いで評価を決める制度です。1954年に、P.F.ドラッガーが自身の著書の中で提唱した組織マネジメントの概念です。
いわゆる定量的に測れる数値目標を指します。
具体的な項目としては、営業職であれば
・受注予算達成率(売上、粗利)
・新規顧客開拓件数
などが挙げられます。
また、さらに細分化し、訪問件数、商談件数等を評価の数値として見られるケースも多いです。評価基準として、これらの目標を最低到達レベルから最高到達レベルまで大きくわけて6段階に分けているケースが一般的です。最低達成レベルは80%以下。最高で120%以上といった具合です。
■定性評価制度(コンピテンシー)
2つ目の評価項目として、コンピテンシーという行動目標が挙げられます。コンピテンシーとは、高業績者やハイパフォーマーに共通する行動特性を抽出したもので、全部で75項目の行動目標のことです。行動目標はあくまでもMBOを達成するために、どういった行動を意識していたかを評価する制度になります。
これも会社によって異なりますが、不動産業界の営業職として多く求められているコンピテンシーとしては、以下があります。
・ビジネスマナー:一流のビジネスマンとして、恥ずかしくない立ち居振る舞いをしているか。
不動産という、高額な商品を扱うビジネスなだけに必須項目です。
・自己革新 (啓発):自己の足りない部分や知識・技能を、自ら積極的に取り入れている。
不動産業界は、専門的な知識が多岐にわたるので、自ら進んで知識を吸収していかないといけません。当然必須項目です。
・目標達成への執着:最後の1分、1秒まで目標達成をあきらめずに、打てる手はすべて打つという姿勢。受注予算達成には必要な行動です。
・プレゼンテーション力:伝えようとしている内容を、的確かつ説得力を持って表現している。
営業としてのコミュニケーション力とプレゼンテーション力は重要です。
その他にも、顧客拡大力、維持力、親密性/ユーモア、傾聴力、条件交渉力などが評価項目となっているケースが多いです。
では、部下をけん引する管理職においては、どういった部分が評価の項目として見られているのでしょうか。
■管理職としての評価
管理職は、これまで紹介した評価制度に加え、「マネジメントができるか、できないか」という視点が入ります。
不動産業界は、売れればいいという一匹狼的な人材(個力)が多い業界です。しかし、昨今の傾向として、「チームやグループでいかにパフォーマンスを出すか」という方向に舵が向いている会社が多いように感じます。
そこで管理職に求められるのが、部下の指導、育成能力です。部下や後輩に気づきを与え、仕事を通じて計画的に部下の人間性を高め、成長させるといった部分が重要です。
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■資格での評価
不動産業界に携わる資格はあらゆるものがあります。宅地建物取引主任士、ファイナンシャルプランナー、不動産コンサルティングなど、資格を取得することが人事評価にプラスにはたらくことは当然です。
それに加え、資格は昇進や昇格への条件にもなるケースが多くあります。自身のキャリアを作っていくためには、重要な項目だといえるでしょう。
■なにをどう評価されたいのか?
ここまでは、一方的に会社側が従業員を評価するという視点で紹介してきました。
しかし、今不動産業界で働く人には、「どういった部分を会社に評価として見てほしいのか」という心構えを持ってほしいと感じます。仕事に対する自らの取組み、パフォーマンスを常に意識しながら会社側に対しても提案・アピールしていくスタンスを持つことが重要です。今は、大企業や会社組織に属していても何が起こるか分からない時代です。だからこそ、自立したキャリアを意識し、仕事に取り組むことが必要だと感じます。「自分の強みは、武器はこれです」と語れるようになることが自身のキャリアを作る上で重要なのです。
ただの労働なのか、仕事なのか。仕事として日々の活動に取組み、自分自身の成果に、自負を持つことで、人間として成長していけます。