前回のコラムで、賃貸需要が高い地域のマンション取得に狙いを定めるに当たり、一つの考え方として築7~8年の物件選択にメリットがある一方、23区内の有望区で購入するには高額になることを覚悟する必要がある旨を述べました。
「マンションの資産価値は立地が8割」などと言われるだけに致し方ない部分もありますが、建物の本質的価値に注目すれば予想以上にコストを抑えられる可能性があります。
そのキーワードは「シンプル・イズ・ベスト」です。収益を得られるポイントを数多く持つ物件に投資することを前提とすれば、建物の本質的価値は共用部分などの見た目の豪華さではなく、建物としての基本構造をいかに備えているかにあります。同時に、建物のどの部分にお金がかかっているかをチェックすることで本質的価値とそうでない部分を見極める必要があります。
不動産を取得する際に幻惑されやすいのが建物の共用部分にみられるエントランスやロビーの豪華さ、ホテル並みのコンシェルジュ、ゲストルーム、入居者専用のジムやプールなどです。
これらは居住者のステイタスを満足させるものかもしれませんが、投資において不必要な豪華さは維持管理や修繕、更新に関わる無駄なコストになりかねなません。
建物の本質的価値としては地震などの災害に強い堅牢な建物であることは当然ですが、メンテナンスや管理が容易であることも建物の寿命を伸ばし、資産価値の維持に大切なことです。
度々指摘されることは、外観のデザイン性を重視するあまり給排水管などの設備の多くが床や壁に埋め込まれてその後のメンテナンスに多額のコストがかかり、修復不可能なケースでは建物の寿命にも悪影響を与えるというものです。
人が住むうえでは、使い勝手の良さや清潔な水回り、一定数のエレベーター、安全で安心なセキュリティ、不在時の宅配ボックスなど必要不可欠なものがあれば良く、建物の本質的な価値がどこにあるかを見るうえでは「シンプル・イズ・ベスト」というキーワードを常に頭に入れておくべきでしょう。